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鯉の概要 / 魚体の名称

改めて説明するまでもないかもしれませんが、今後の解説のために魚体の各部名称を上の写真にまとめておきます。水中で自由に泳ぎまわるための5種類のヒレ、餌を探るセンサーのひとつであり、かつ鯉の特徴とも言える2対のヒゲ、呼吸器官のエラブタ、そして目、鼻孔、口吻からなります。さらに真鯉の特徴でもある全身を覆うウロコの下には、粘液を出す粘液膜があります。この粘液が魚体を覆って体温の調整を担っているようです。水温が下がると粘液は多くなります。また、ウロコの中でも特に側線上のウロコには、1枚に1個の孔があいています。以下にそれぞれの詳細について説明していきます。

魚体の各部名称

口吻(こうふん)

鯉は水底にある餌を泥ごと吸込み、必要な餌だけ残して不要物を口から吐き出します。従って、口は下方に長く伸びるようにできていて、左の写真のように普段はシワシワに折りたたまれています。いつも鯉を釣っている皆さんはすでに経験済みでしょうが、鯉の口は他の魚と比較して割と肉厚にできています。このためフッキングするとガッチリハリが食い込み、なかなかはずれないことがあります。

ヒゲ

先に述べた通り、鯉には口吻のすぐ脇と少し上に2対のヒゲがあります。口吻脇のヒゲの方が長く、上のヒゲは一般に非常に短く余り目立ちません。左上の写真の鯉は、特に長いヒゲを持った個体で、一般にはこの半分程度しかありません。ヒゲについてはさらに食性と味覚のページで詳しく解説します。

鼻孔

鼻孔は目のすぐ前についています。鼻孔はもちろん嗅覚器官であることは言うまでもなく、水中のアミノ酸や脂肪酸の刺激を受けて餌の存在を知ることができます。その他に、オスは排卵したメスの卵巣液(プロゲステン系ホルモン)の臭いに反応して、精子の形成を促進します。 さらにに、外敵から逃れる警報の受け取りにも使われますが、これは「嗅覚」のページで詳しく紹介します。

ウロコと側線

一枚一枚のウロコは頭から尾ビレに向かって出ており、これが互いに重なり合うように配列しています。側線ウロコはエラブタの上部から尾ビレまで一列に並んでいます。一枚のウロコにひとつの側線孔があることが写真からおわかりでしょうか。側線孔は側線管を経由してクプラという寒天状器官につながっています。クプラは水圧センサーの役割を持っています。クプラはさらに側線神経へとつながっています。

 
水圧を感じるということは、水中を伝わる音を波動としてキャッチすることはもちろん、大気圧と連動する水圧変化や、水の流速に連動して変化する水圧変動もキャッチすることができると考えられます。さらにここからは私の推測ですが、体の左右に側線があるということは、水圧の分布がわかると考えられます。これはつまり音の方向、水流の方向などが 左右の差から判別できるということです。
 
側線管はリンパ液によってのみ外部の水と隔てられていて、いわば神経が外部に面しているようなものです。センサーの感度を良くするにはセンサーが露出しているほうがいいのはあたり前ですが、魚にとってはここを極端に刺激されると大変な苦痛になると想像されます。ですから釣り上げた鯉を扱う場合は、できるだけ柔らかくて濡れたところにそっと置いてあげるようにしましょう。

ヒレと鰭条(きじょう)

鯉は背ビレの基底(付け根の部分)が長く、これがチャイニーズカープとの大きな違いのひとつとなっています。ヒレの筋を鰭条(きじょう)といい、背ビレ前端の長い鰭条は、後縁がノコギリの歯(鋸歯:きょし)のようにギザギザになっています。また尻ビレ前部の長い鰭条にも鋸歯があります。鰭条の数は鯉の場合、背ビレが19から21本、尻ビレが5本です。ただし、鰭条の数え方には分類学上の約束があって、一番前の長い鰭条よりも前にある短い棘状のものは数に入れないことと、最後の鰭条2本は1本として数えることになっていますので注意してください。
 
また、この鋸歯は大きな鯉ほどはっきりと現れていることが多いようです。鋸歯はリリースする際にしばしばタモに引っ掛かっている場合があります。引っ掛かったまま無理に振り落とそうとすると鯉を傷めることになりかねませんので、手でほどいてからタモに入れ直して、そっとリリースしましょう。

背ビレの前端鰭条の鋸歯

尻ビレの前端鰭条の鋸歯

参考文献
1)「図解早わかり 野ゴイづり入門」 山田勲 西東社 
2)「詳しくわかる野ゴイ釣り」 小西茂木 西東社
3)「釣り魚博士」 岩井保 保育社
4)「釣りの科学」 森秀人 講談社
5)「日本の魚」 上野輝彌、坂本一男 中公新書

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