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鯉の概要 / 鯉の種類と特徴

「チャイニーズカープ(Chinese Carp)」とは青魚、草魚、ハクレン、コクレンの総称で、「中国四大家魚」とも呼ばれます。Carpと付く通りこの4魚種はいずれもコイ科に属しますが口ひげはなく、それぞれ 少し異なった生態です。
 
日本には明治以降食糧増産の目的で数回にわたって移入されていますが、昭和20年代になるまではこれらの魚は中国以外の土地で絶対に産卵しないと信じられていたようです。この定説が覆されたのが昭和23年のことです。霞ヶ浦付近で当時としては見慣れないチャイニーズカープが急に増え始め、漁師たちがさわぎはじめたことをきっかけに、天然産卵場が利根川にあることが確認されました。そもそもチャイニーズカープはアジアモンスーンが襲来する中国に住み、突然の水位上昇によって産卵を開始し、その卵は濁流に乗って流されながら孵化する(流下卵)という、日本在来種にはない特殊な性格を持っていたのです。ところが中国の川に比べると日本の川は流程が短いために、孵化する前に海に流出してしまうために繁殖しなかったようです。日本第二位、322kmの流程をもつ利根川が偶然にも繁殖の条件を満たしたのです。
それではチャイニーズカープ4魚種について解説します。

青魚(Black Carp)

日本名では青、英名ではBlackと、色の表現が違うのは面白いところです。国内の淡水魚釣りでは最大の対象魚で、これまでに160cmを超えるものも釣り上げられています。外観上の特徴としては、広げると三角形の背鰭、鯉に比べて頭や顔が小さい八頭身美人。そしてその名が示すように体色は青あるいは黒味がかっています。食性は貝類を好み、鯉と同様に丈夫な咽頭歯を持ちます。生存数は他の魚種に比べると圧倒的に少なく、幻の魚とも言われますが、本場中国では比較的ポピュラーな魚です。1990年埼玉県水産試験場の研究報告によると、チャイニーズカープの中で青魚の比率は、0.28%ということです。これをもとに茂木薫さんが試算したところでは、利根川水系における生息数は728から1456尾となっています。通年この青魚を狙って川に通いつめてもほとんど釣れることがないのは、この数字から納得できます。

青魚:中ソンさん撮影

草魚(Grass Carp)

名前の通り草食で、水辺の葦の葉などを主に食べます。 チャイニーズカープの中では日本国内での生息数が最も多い魚種です。そもそもチャイニーズカープが日本に移入された時は草魚を移入するのが目的であり、他の3魚種は偶然混入していたということです。人工的に採卵する技術が1960年代に見つかって以来、全国各地に放流されています。皇居の御堀にも放流されているのはご存知の方も多いと思います。外観上の特徴は頭部が鯉よりも小さく、 真上から見ると頭部が丸みを帯びています。口は上下に開く形で、水底に向かって伸びる鯉の口の形とは明らかに違います。全長は1mを超えるものも多く釣り上げられています。釣り味に関しては、同寸の鯉に比べると明らかに抵抗なくすんなり寄って来ますが、水から上げた後は鯉よりも激しく暴れまわります。私が初めて草魚を釣ったときは、サイズは小さかったのですが激しい暴れ方に驚いたものです。それだけに魚体が傷まないように扱いましょう。

草魚:トム石井さん撮影

ハクレン(Silver Carp)

英語名の通り魚体はシルバーで、鱗が鯉よりも細かく、口よりも目の位置が下に付いています。プランクトンを主食としていて、中層を泳いでいることが多いため、リール竿と練りエサを使ったウキ釣りで攻める人が多いようです。利根川では非常に生息数が多く、普段釣りをしていると、時々目の前を死体が流れてきます。体表面のヌメリが多く、匂いもキツイため釣りの対象として嫌う人もいます。しかし一方で、猛烈な引き味に魅了される人もいます。

参考文献1より引用

コクレン(Big Head Carp)

ハクレンに似ていますが、頭や口がハクレンよりも大きいのが特徴です。体の色は全体的に黒っぽく、まだら状です。利根川水系においても生息数は青魚よりも少なく、釣りの対象にしている人はいません。従って実際に野性のコクレンを観察することはほとんど出来ませんが、幸運なことに2005年、私は利根川で見つけることができました。岸辺に立っていると、目の前を50~60cm程度のものが岸に沿ってゆっくり泳いでいました。体色ではっきりとハクレンと識別できます。

参考文献1より引用

 

参考文献
1)「魚の社会学」 加福竹一郎 共立出版
2)「新・淡水大魚釣り トーキョーアオウオ生活」 茂木薫 つり人社
3)「図解早わかり 野ゴイづり入門」 山田勲 西東社

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