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鯉の生態 / 泡づけ

魚には、ウキブクロがない魚種とある魚種がありますが、鯉はウキブクロを持っています。ウキブクロは音波をキャッチする器官のひとつであることは「聴覚」のページで述べましたが、そのためには所定の内圧を維持しておく必要があります。そもそもウキブクロのガスがどこから供給されるかといいますと、下図に示すように赤線組織というのがウキブクロの頭よりの方についていて、その中を通る血液から主に酸素が供給されます。
 
ウキブクロはひょうたん型の形をしていて、中央のくびれを境に頭側を前室といい、後側を後室といいます。前室が赤線組織につながっていてガス吸収室の役割を果たし、後室はガス貯蔵室の役割を果たしています。さらに、鯉の場合は中央のくびれの部分、かつ後室寄りの所から、細い管が食道に向かって伸びています。この管を持つ魚種を「有気管魚」と言います。ウキブクロの気圧が高くなりすぎた時に、周囲の筋肉を収縮させて管からガスを押し出します。押し出されたガスは食道から口に達し、水中に吐き出されます。これが俗にいう「泡づけ」です。ですから泡づけは、有気管魚にしかみられない現象です。
 

ウキブクロの構造と内部ガスの流れ

 
エサをみつけた鯉は、臭いや視覚によって次第に興奮度を増し、血液から大量のガスが赤線を通して前室に吸収されます。ウキブクロの内圧が通常よりも高くなり過ぎると、管から排気して泡づけとなります。鯉の場合、泡はピンポン玉ほどの大きさになる時もあります。ぶっ込み釣りでは見えにくいですが、述べ竿でウキ釣りをしていると、ウキの周辺で盛んに泡づけを見ることがあります。これは鯉が寄ってきた証拠で、絶好のチャンスです。
 
ちなみに、有気管魚ではない魚はどうやってウキブクロの圧力を調節しているかといいますと、赤線組織がガスの供給と排気両方をつかさどっています。特にアジなどのように、タナが変化しやすく、水圧変動に頻繁に対応する必要がある魚種はこの機能がよく発達しています。ガスが必要なときは血液から吸収し、排気が必要なときは逆に血液にガスを放出します。
 

参考文献
1)「釣りの科学」 森秀人 講談社

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