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Record1500 / メカニズム(1)

今回はRecord1500のメカニズムを詳細に知るために分解してみました。写真に分解した全パーツを示します。すでにお話しましたが、7000シリーズのパーツ数は60点余りあります。それと比較すると、このリールはパーツが非常に少ないことがわかります。この後組み立てながら、一点一点解説していくことにします。組み立てにおいては、パーツをクリーニングした後グリスアップしていきましたが、製造後長い年月が経過している関係上汚れが全く落ちない箇所が多くありました。写真においてはそうした汚れもRecord1500の歴史と捉えてお楽しみください。
 

Record1500の全パーツ

左サイドプレート

はじめに、左サイドプレートから説明します。スプールキャップはメカニカルブレーキの機能を有しているため、締め込みを微調整する必要がありますそのためスプールキャップの緩み止めとして軸受けを取り囲むように花びら状の緩み止めスプリングがあります。スプールキャップの内部にはゴム状のパッキンが入っていますが、劣化している恐れがあるため分解は控えました。この部分にオイルを溜め込むように設計されています。
 

左スプールキャップ


 
左サイドプレートの内側にはクリック機構があります。クリックON・OFFの時スライドするクリックポールを、C型の形状をしたスプリングアームで挟み込むように構成されています。クリックポールは後ほど説明するクリックギヤによって弾かれてクリック音が出ます。動作原理の詳細はAmbassadeur9000CLですでに説明していますので割愛します。
 

クリック機構


 
スプリングアームをよく見ると、形状が歪んでいることがわかります。工場出荷時点でこうなのか、前のオーナーが手を加えたのか定かではありませんが、クリック力を調整するために工場で形状を調整している可能性も否定できません。さらに、クリック機構の周囲に溝があります。これはスプールのエッジがここに入り込むことで、ラインの巻き込みを防止しています。また、軸受けは左サイドプレートにカシメられており、分解することができません。
 

スプール

スプールは芯と左右のツバの3部品を一体にカシメて作られています。さらにシャフトを通して、スプールの芯に穴を開け、スプリングピンを打ち込んで固定しています。現代のリールはスプールは一部品で作られていますが、当時は製造技術が未発達だったのかもしれません。スプールがどうやって作られているかについては、左サイドの写真から知ることができます。スプールの表面状態から、アルミダイキャストであることがわかります。
 

穴はシャフトの固定のため


 
初期のRecordのスプールは旋盤加工の削り出しで作っていて、1944年にAke Murvallが工場長に就任以降ダイキャストに変わったとみられます。Akeの前職はダイキャストメーカの技術者だったそうです(第5研究室)。したがって、このリールは1944年から1951年の間に製造されたと推定できます。
 

左サイド(クリックギヤ)


 
左サイドの写真では、クリックギヤが見られます。歯数は9個ですので、スプールが一回転する間にクリック音が9回鳴ります。クリック機構は現代のリールと基本的に変わりませんが、現代は材料を金属からプラスティックに変えてコストダウンしています。
 
右サイド(ピニオンギヤ)スプールの右サイドにはピニオンギヤがあります。歯が角度を持ったはす歯ギヤを使っています。歯数は12。シャフトの先端が傷んでいますが、おそらく前のオーナーが手を加えたものと思われます。シャフトとギヤはキー溝を切って圧入で固定されています。
 

右サイド(ピニオンギヤ)



機構部が集中している右サイドプレートについては、次回お話したいと思います。
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