はじめに
並継のこぶちゃんより、「リールが巻けない!」という相談をいただきました。リールのモデルは、Ambassadeur 7500C3 JAPAN SPECIAL(JPS)。少し前に中古で購入しデビューさせたところ、ラインにテンションがかかるとリールが巻けなくという状態です。リールを預かり、帰宅後に詳しく見ることにしました。
不具合調査
[写真1] 7500C3 JPSはかつて鯉釣りの定番リールで、大変人気があったモデルです。今でも時々中古釣具店やネットで見かけることがあります。このリールは外観の傷などがほとんどなく、とても美しい感じがします。
手始めに、不具合の現象をはっきりさせる作業に取り掛かります。こぶちゃんの話からドライブ系に問題があるのは間違いありません。可能性が高いのはドラグ系の不具合。ならばドラグを締めてラインを力ずくで引っ張ってみると、あらあら・・・ズルズルと出てきてしまいます。ドラグを強く締めても結果は同じ。ドラグワッシャーに問題がありそうです。
分解する前にドラグ力を計測しておきます。何回か計測した結果、2.1から2.3キロです。アブのリールは他社のモデルに比べドラグ力が小さいのですが、これはいくらなんでも小さ過ぎます。メーカーの仕様ではハイスピードモデルは最大ドラグ6キロとなっています。ドラグワッシャーに何らかの異常があると思われます。
[写真1] ABU Ambassadeur 7500C3 JPS
[写真2] ドラグワッシャーにグリスがたっぷり
[写真2] ハンドルから順に分解してみると、通常より多くグリスが浸み出していることに気づきました。そしていよいよドラグワッシャーを取り出すと、グリスがたっぷり!これではドラグワッシャの摩擦力がほとんど効かないのも納得。ネジの外観などから何度か右サイドプレートを開けた形跡があるため、前のオーナーがグリスを塗ったものと想像できます。それにしても、このままでは使えなかったのでは・・・(笑)
[写真3] さらに分解してドライブギヤをはずしたところ、グリスがたっぷり入っています。
[写真4] ドライブギヤの裏や周辺までグリスが盛り上がっているのがわかります。
[写真3] ドライブギヤの表裏にグリスがたっぷり
[写真4] ドライブ系全体に多量のグリス
クリーニングとグリスアップ
ここから先は、通常のオーバーホールの手順です。部品をパーツクリーナーで洗浄してよく乾かします。ギヤやクラッチの摺動部にはグリス、ドラグワッシャにはオイルを使います。(グリスとオイルの使い分けはこちら)ドラグワッシャは、綿棒を使いオイルを両面に薄く伸ばして完了です。金属のワッシャ(フリクションワッシャ)にはオイルを塗りません。(オイルが過剰になるため)
ドラグ力を確認
組み立て後にドラグ力を数回測定したところ4.7から5.3キロと、オーバーホール前に比べて倍以上になりました。スターホイールを目一杯締め込んでいるわけではないのでメーカー仕様よりも小さな値ではありますがおそらく正常な範囲でしょう。結果的にグリスアップの加減でドラグ力が復活しました。
まとめ
7000シリーズでここまでドラグ力が小さい現象を私は初めて体験しました。まるで自転車のブレーキにオイルをつけたような状態です。初めてグリスアップをする方は、この「ABU LAB」の各ページをご覧になった上で実践してください。
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