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鯉の生態 / 消化器官

魚には胃があるものとないものがありますが、鯉は胃がありません。鯉の消化管は食道に続いてただちに腸につながっています。また、肝臓とすい臓が一緒になった「肝すい臓」という特別の器官を有します。こうした特長はコイ科全般に共通しています。腸で食べ物を消化するために必要な消化液を胆汁(たんじゅう)といい、これをたくわえている丸い袋を胆嚢(たんのう)といいます。胆汁は緑色の苦い液で、昔から鯉を料理する際には「キモ(胆嚢のこと)を潰さないように」と言われているほど強い苦味があるそうです。
 
余談ですが、昔から腹薬として「熊の胆(い)」というのがあります。これは熊の胆嚢を乾燥させて作ったもので、胆汁が人間の消化促進にも効くために服用されてきました。現在では熊の胆の入手が困難なため、いろいろな魚の胆嚢を用いている場合があるそうです。
 
下の図は鯉の腸(水色)とウキブクロ(黄色)を示したものです。ウキブクロはヒョウタン型にできており、中央のくびれたところから細い管で食道の終端につながっています。 この細い管がある魚を「有気管魚」といいます。この働きについては、「泡づけ」のページで詳しく紹介します。

鯉の消化器とウキブクロ


鯉の腸の長さは、他の魚種に比べて決して長い方ではありません。一般に腸の短い魚種は、消化しやすい動物質をエサとする場合が多いのですが、鯉は誰でも知っている通り雑食です。なぜ腸が短くても色んなものを消化できるかというと、喉の部分に咽頭歯(いんとうし)があって、これでエサをすり潰して消化しやすい状態にしたうえで腸に送り込むためです。咽頭歯とは人間の奥歯に似た臼状の歯で、白いホーロー質で覆われています。左右一対の骨に片側4個の歯が並んでいます。

腸の長さの比較 (出典:「釣り魚博士」 岩井保 保育社 p127 より)
 

鯉はすでに述べたとおり胃がなく、その分食いだめができません。したがって、少量ずつ短い時間間隔でエサを食べなくてはいけません。鯉釣りにおいて、深夜から朝など特に釣れる確率が高い時間帯があるものの、それ以外の時間帯であっても比較的満遍なく釣れる場合があります。これは鯉が胃を持っていないことと大いに関係があると考えられます。
 

参考文献
1)「釣り魚博士」 岩井保 保育社
2)「魚の社会学」 加福竹一郎 共立出版
3)「川の魚」 末広恭雄 ベースボールマガジン社
4)「目から鱗の落ちる話」 末広恭雄 柏書房
5)「魚の謎解き事典」 佐藤魚水 新人物往来社
6)「魚の博物事典」 末広恭雄 講談社
7)「日本の魚」 上野輝彌、坂本一男 中公新書
8)「コイの釣り方」 芳賀故城 金園社

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