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文芸・故事・伝説 / 御供の鯉

栃木県真岡市の大前(おおさき)神社は1500有余年の長い歴史を持つ神社で、主祭神は大黒様です。境内には平成元年に完成した大前恵比寿神社もあり、こちらの御祭神が恵比寿様です。御神像は日本一えびす様として有名で、多くの参拝者が訪れます。
 

大前神社境内にある大前恵比寿神社


大前神社は五行川の横に位置していますが、この川に住む鯉にまつわる民話「大前神社の御供(ごく)の鯉」が境内に掲示されていますので以下に引用紹介します。
 

境内に掲示された「大前神社の御供の鯉」

 

大前神社の御供の鯉

 昔からな、ここ真岡ではよ、三つの川、小貝川、五行川、鬼怒川のな、水の恵みを受けて人々は暮らしていたんだと。
 さて、この五行川の川下に下館藩の侍が住んでいたんだと。ある日な、うれしそうにでっかい紙包み提げて帰ってきたんだと。いつもは「男子厨房に入らず」なんて言ってたのによ、すぐによ、でっかい声でおかみさん呼ばるんだと。「どうしたのさ。」見ると亭主はな、まな板の前で包丁を持って震えているんだと。あきれながら見るとよ、まな板の上でさばかれていたコイの血はな、「大前大権現」と書いたように見えたんだと。
 「まさか五行川で捕ってきたんじゃあるまいね。」亭主が言うにはな、魚屋の前を通ったら、おけの中に見事なコイがいたんだと。「ウナギより精がつきやすで」威勢のよい声に釣られてな、買ってきたんだと。それから二人は神主さんに訳を話してよ、供養してもらうことにしたんだと。
 それからというものコイは、神様のお使いと言われるようになってな。今では、神社の脇を流れる五行川にコイを放ってお参りして、願い事をする人がいっぺえいるんだと。そしたら、五行川のコイはよ「御供の鯉」と呼ばれてな、どんどん増えていったんだと。大雨が降ってもよ、一匹も逃げ出さねえんだとさ。おしまい。

 
大前神社において鯉は神使であり、神職は鯉を食べてはいけない決まりとなっているそうです。日本一えびす様が抱いている魚は鯛ではなく鯉になっています。写真でも魚にひげがあることがはっきりわかると思います。
 
大前恵比寿神社は、金運招福・商売繁盛・健康長寿・災難厄除のご利益があるとされ、日本一えびす様の目の前には、「金運招福コイの池」があります。池の周囲に飾られた絵馬の中には三匹の鯉模様が描かれたものもあります。
 
「コイの池」の手前には、願い事が叶うかどうかを占う「おもかるコイ石」があります。説明書きを引用して以下に紹介します。

コイの池

おもかるコイ石

おもかるコイ石

お賽銭箱の前で願い事を祈念してコイの石を持ち上げ、そのときに感じる石の重さが、自分の予想していたよりも軽ければ願いが叶い重ければ願いが叶わないとする試し石で、一般には「おもかる石」の名で親しまれている。

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