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鯉の歴史と文化 / ドイツ鯉の来日

ドイツ鯉が最初に来日したのは、明治38年(1904年)のことです。ドイツミュンヘンのババリヤ王国博物館長のフランツ・ドフレン博士が、当時の水産講習所所長、松原新之助氏に革鯉と鏡鯉30尾を贈りました。この年の2月には日露戦争が勃発しておりましたので、鯉の輸送もスムーズには行えず、便船を3度も変えることとなりました。その結果、日本に鯉が着いた時には当初の30匹から 大幅に減ってしまい、最終的には、革鯉のメス4匹、鏡鯉のオス1匹で、いずれも体長6センチの稚鯉が無事到着しました。
 
オスが1匹しかいませんでしたので、翌年は日本の在来鯉との交配が行われました。こうしてドイツ鯉と在来鯉の混血種苗がつくられ、静岡、石川、福岡そして海外では当時日本の占領下にあった台湾に配られました。こうしたことから、日本では典型的なドイツ鯉をみることができません。
 
写真はフランスの友人、エリックが送ってくれた革鯉の写真です。ご覧のように体高が非常に高く、体全体が丸い形状をしているのがおわかりかと思います。日本でドイツ鯉と呼んでいるものは、一般に鱗が少ないものを指しますが、体型そのものは在来種にほぼ等しいものが多いようです。長い間、在来鯉との交雑を繰り返してきたわけですから、在来種のDNAが強く引き継がれているものと考えられます。

典型的な革鯉(写真:Eric)

ドイツ鯉の長所は 1)生育がすこぶる迅速。 2)内臓が少なく、肉の量が在来種に比べて多い。 3)寒さに強く、繁殖力が強い。 などが挙げられます。ドイツ鯉は寒さに強く、冬でも給餌が可能なため、在来種よりも倍以上の速さで生長します。しかしながら、日本での鯉の長い歴史と文化を背景に、鱗がすくない奇異な外観が日本人にはなかなか受け入れられず、移入から約100年経った今ではドイツ鯉はかなり少なくなってきました。
 

参考文献
1)「コイの釣り方」 芳賀故城 金園社
2)「魚の社会学」 加福竹一郎 共立出版

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