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ドイツ鯉の来日

初版 2005.11.27

《要約》

  • 明治38年、ドイツから革鯉と鏡鯉30尾が贈られたが、輸送中に大半が死に、稚鯉5尾のみが到着した。
  • 残された稚魚と在来鯉を交配し、混血種が各地や台湾に広まった。
  • 現在の「ドイツ鯉」は在来種との交雑が進み、体型も在来に近いものが多い。
  • ドイツ鯉は成長が早く寒さに強いが、外見が受け入れられず現在は希少となっている。

ドイツ鯉が日本に初めて渡来したのは、明治38年(1904年)のことです。ドイツ・ミュンヘンにあったババリア王国博物館の館長、フランツ・ドフレン博士が、当時の水産講習所の所長であった松原新之助氏に、革鯉と鏡鯉をあわせて30尾贈ってくれたのが始まりです。
 
この年の2月には日露戦争が勃発しており、鯉の輸送は困難を極めました。便船を三度も乗り継ぐこととなり、無事に日本へ届いたときには、30尾のうち残っていたのは、体長6センチほどの稚鯉で、革鯉の雌4匹と鏡鯉の雄1匹のみとなってしまいました。
 
雄が1匹しかいなかったため、翌年には日本在来の鯉と交配されることになります。こうしてドイツ鯉と在来鯉の混血種がつくられ、静岡、石川、福岡、さらに当時日本統治下にあった台湾などにも分配されました。このような経緯から、現在の日本では純粋なドイツ鯉を目にする機会はほとんどありません。
 
こちらの写真は、フランスの友人エリックさんが送ってくれた典型的な革鯉の姿です。ご覧のとおり、体高が高く、全体に丸みを帯びた体型が特徴です。日本で「ドイツ鯉」と呼ばれているものは、一般に鱗が少ないものを指すことが多いのですが、実際には体型が在来鯉とほとんど変わらないものも多く、長年にわたり在来種との交雑を重ねてきた結果、在来のDNAが色濃く受け継がれていると考えられます。
 

典型的な革鯉(Ericさん撮影)

 
ドイツ鯉の特長としては、以下のような点が挙げられます。
1)生育がたいへん速いこと
2)内臓が少なく、可食部が多いこと
3)寒さに強く、繁殖力も旺盛であること
 
寒冷地でも給餌が可能なため、在来種の倍以上のスピードで成長するといわれています。ただし、日本には長い年月をかけて育まれてきた鯉文化があるため、鱗が少なく独特な外見のドイツ鯉は、なかなか一般には受け入れられませんでした。そのため、移入から100年余りが過ぎた現在では、ドイツ鯉の姿もずいぶんと少なくなってきたようです。
 


参考文献
1)「コイの釣り方」 芳賀故城 金園社
2)「魚の社会学」 加福竹一郎 共立出版