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鯉の生態 / 嗅覚

魚の鼻は人間と違って口腔とつながっていません。これはエラ呼吸をする際に鼻がつながっていると口腔圧とエラ圧のポンプ作用が働かず、うまく呼吸ができなくなってしまうためと考えられます。鯉の鼻孔をよく観察すると、片側に2個の鼻孔が隣接してあり、左右合計で4個の鼻孔があることがわかります。前方が入水口である「前界孔」といい、後方が出水口である「後界口」と言います。前界孔から後界口の間に「嗅板」というヒダ状の器官があり、この中に嗅覚細胞があって嗅神経へとつながっています。鯉が泳ぐと前界孔から後界口へと水が通過し、臭いを感知する仕組みになっています。
 


魚の嗅覚は、魚油、アサリ、人の唾液、サナギの抽出液などに敏感に反応することがわかっています。成分としてはアミノ酸や脂肪酸を特に好みます。これに対して、腐敗したタンパク質やデンプンは魚を遠ざけることが明らかになっています。これらの腐敗物質は、魚が最も嫌う臭気である「プトマイン」や「硫化水素」を発生するためです。ところがサナギや魚油などのある程度の腐敗は、魚が好む臭気である「アルデヒド」を発生するため、高い集魚性を有します。
 
この他に、魚が好む臭気のひとつとして、「性フェロモン」が挙げられます。メスが放つ性フェロモンにオスが反応し、ハタキが始まります。一般にフェロモン活動は、海水魚よりも淡水魚に多く見られるそうです。
 
フェロモンの中には魚が嫌う臭気である「警報フェロモン」があります。鯉の体が傷ついて細胞が破壊されるとともに水中に流れ出し、これによって同属の魚は逃走します。ですから、釣った鯉にはできるだけダメージを与えないようにリリースすることが、次のアタリをもらうために大事です。ちなみに、淡水魚のなかには警報フェロモンを放出しない魚種もありますし、海水魚にいたってはほとんど放出しないそうです。鯉師は特にこのことを知っておくべきでしょう。
 

参考文献
1)「釣りの科学」 森秀人 講談社
2)「釣り魚博士」 岩井保 保育社

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