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鯉の概要 / 産卵と孵化

魚の産卵行動は2種類に大別できます。ひとつは腹の中にある卵を一度に全部産みきってしまうもの、そしてもうひとつは数回にわけて卵を産むものです。鯉は数回に分けて産卵します。産卵期は場所によって違いはありますが、平野部では概ね5月から6月にかけてであり、山上湖ではこれより少し遅れるようです。最もわかりやすいのは、各地域の漁業協同組合などで設定されている鯉の禁漁期間がその水域での産卵期ということになります。 水温でいいますと18℃から26℃程度で産卵し、17℃以下あるいは28℃以上では産卵しないそうです。
 
産卵場所は浅場で、「鯉のコウラ干し」と言われるほど浅場にやってきて、アシやマコモなどに産卵します。それ以外にも、流木や木の根などに産卵することもあります。卵の総数は鯉の大きさにもよりますが、2~3kg程度の鯉で20~30万粒ほどです。卵は表面が粘液によって覆われているため、水生植物などに粘着します。
 
私の地元の河川では、産卵期の早朝に川原に行きますと草むらでバシャバシャ産卵している光景が見られます。普段とは違い、驚くほど近いところで産卵していますので、そんな場所からはそっと離れて竿を出すようにしています。すべての生物において産卵、出産は神聖なものと思います。そっと見守ってあげましょう。
 
ちなみに鯉の産卵時は、尾鰭で激しく水面を叩きながら行うことから、産卵行動のことを「ハタキ」といいます。私の想像ですが、水面を叩く=水面をハタク となって、これがさらに「ハタキ」といわれるようになったのではないでしょうか。語源を詳しくご存知の方はお教え下さい。
 
こうしてみますと、水生植物は魚の産卵において必要不可欠なものです。特にアシは水質改善にも重要な役割を担っていますので、霞ヶ浦や北浦の水郷地帯でも少しずつではありますが、人工的に増やしています。以前テレビで琵琶湖の豊富なアシ原と、大鯉の群れが産卵している光景を見たことがありますが、霞ヶ浦、北浦では残念ながらそうした光景を今は見ることができません。湖岸全周をコンクリート護岸工事をしている水郷地帯に、いつかまた豊富な水生植物が広がり、水質が改善することを祈ります。
 
さて、産卵が終ってから水温20度前後で4~6日で孵化が始まります。文献によって多少孵化までの日数が違いますが、これは水温の影響がるためです。 ちなみに水温30℃では2日、水温14℃では約12日で孵化します。孵化後20~25日くらいで体長1cmになります。その後の成長は、鯉の種類や水温、餌の状態で大きく変わってきます。私の地元では、数cmの鯉が数百匹の群れを作って泳いでいる光景を時々見ることができますが、とても微笑ましく、そして無事に育って欲しいと願います。
 

参考文献
1)「魚の生活」 末広恭雄 ベースボールマガジン社 
2)「川の魚」 末広恭雄 ベースボールマガジン社
3)「コイの釣り方」 芳賀故城 金園社
4)「図解早わかり 野ゴイづり入門」 山田勲 西東社
5)「魚の社会学」 加福竹一郎 共立出版
6)「川と湖の魚①」 川那部浩哉 水野信彦 保育社

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