ABU 5500C のオーバーホール記
2025年冬のある日、友人から連絡がありました。
「昔の釣具を整理していたら、オリンピック時代のアブガルシアが出てきました。東京湾でカレイを狙っていた頃に使っていた5500Cなんですが、これは価値あるものでしょうか?価値があるものなら飾っておこうかと…」
オリンピックが代理店の時代のABU Ambassadeur 5500C
ABUの5500シリーズは現行モデルが出ていますが、彼の持っていたのは1988〜1990年代、オリンピックが正規代理店をしていた頃のもの。付属していたロゴ入りの袋が、その時代の空気をよく伝えてくれます。
私はこう返しました。
「最近はABUの中古相場が全体的に上がっているようです。私はオークションをやらないので詳しい値段は分かりませんが、状態が良ければそれなりの評価はされると思います。ただ、“ビンテージ”と呼ばれるのは1980年以前のモデルが中心ですから、これは実際に使ってこそ楽しめるリールだと思います」
友人は
「海釣りで使っていたので、ちょっとメンテをした方がいいかもしれません」
「そうですね。一度しっかりオーバーホールしておけば、これからも長く使えると思います。写真を見るかぎり、海で使っていたとは思えないほどきれいです。使ったあとに水洗いするなど、手入れがよかったのでしょう。ご自分でメンテをされることをお勧めしますが、もし面倒でしたら、今度会ったときにお預かりしますよ」
こうして話がまとまり、最初の連絡から3ヶ月ほどして、リールが私のもとに届きました。「仕上がりは急がないので、秋の釣りシーズンに間に合えば」とのこと。時間に余裕があるので、私もじっくり取りかかることにしました。
目視と動作チェック
まずは状態のチェックから
まずは外観から確認。使用感はあるものの、目立ったキズや腐食は見当たらず、全体として非常に良好な状態です。ハンドルを回してみると、やや重さを感じますが、安定した回転で、致命的な不具合は見られません。フットナンバーから1989年製のリールであることがわかりました。友人は「機械物が苦手なので、一度もメンテナンスをしたことがない」そうです。
グリスが劣化して固まりかけています
分解して洗浄します
次に分解して内部のチェックに入ります。海で使用していたとのことでしたが、塩害はほとんど見られず、パーツの劣化や摩耗もわからない程度。グリスは全体的に劣化して固まりかけています。ドラグワッシャなどの消耗品も問題なかったため、交換の必要はありません。
オーバーホールの内容
オーバーホールをして完全に復活
今回は、パーツ交換をせず、各部の洗浄とグリスアップが中心です。ギア、クラッチ、レベルワインダーなどの可動部分を丁寧に洗い、必要な箇所にグリスとオイルを適量施して組み上げます。ベアリングもスムーズに回っていたため、そのまま使用する判断としました。
オーバーホールを終えて
今回の5500Cは、外観・内部ともに良いコンディションで、消耗部品の交換も不要。洗浄とグリスアップといった基本的な作業だけで、本来の性能をしっかりと取り戻せました。作りの確かさは、やはりABUならではです。そして釣行後の手入れの良さにオーナーの愛着がうかがえます。
仕上がったリールを手に取り、スプールを指先で軽く回すと、オーバーホールの成果が感触として返ってきます。静かな回転、軽やかな動き。こうした作業はやっぱり楽しいものですね。