10話 コンテンツ「Carp」
個人が運営するホームページは自由に制作できる反面、その人のキャラクターや知識がまともに反映されてしまいますので、怖い面もあります。自分を不特定多数にさらけ出すことになりますので、せめて間違ったことは書かないように事前に調査するよう心掛けています。
MCFのコンテンツの中で、最も調査に時間を要したのが「Carp」です。釣りに行かない週末には図書館に通い、およそ2年ほどかけて調査しました。鯉は身近な魚であるため、簡単に調査が進むと思っていたのですが、実はそうではないことが調査を始めてわかりました。系統立ってまとめられた文献は皆無で、散在した情報を拾い集める根気のいる作業になりました。
そんな甲斐があってか、「Carp」には鯉釣りとは無縁の方のアクセスが多くあるようです。錦鯉を趣味とする方、鯉の料理に興味を持った方、鯉の絵画や彫刻に興味を持った方、YAHOOきっずで鯉を調査する子どもなど、幅広くご覧下さっています。時には私の不勉強をご指摘してくださる方もいらっしゃるので、大変有難いと思います。
最近は調査を中断していますので「Carp」を更新していませんが、まだまだ鯉について知らないことが多いので、また意欲が出て来た時に調査を再開したいと考えています。
9話 アナクロニズム
ここ2年間でtwitterが急速な広がりを見せています。特に昨年あたりからマスメディアで取り上げられる機会も増えていますが、このコラムを訪問した方の中にも、既に利用している方がいることと思います。速報性に優れ、入力の手間を究極的に省いたサービスですので、明確な目的を持った一部の人にとっては今後さらに強力なツールとして発展していくものと思われます。
ところで国内の鯉釣りサイトに関して、実質的に運営されている件数はピークを越して減少傾向にあります。代わってブログが台頭してきていることは皆様もご存知のことと思います。さらに今シーズンは「荒川なう」とか、釣り場からの実況中継的twitterが登場する可能性が高いと考えています。
こんな急速なネット環境の流れではありますが、MCFの方向性のひとつとして「愚直に手間をかけよう」と考えています。サイト運営も鯉釣りという趣味の一部ですので、あえて効率化を目指す必要はなく、可能な限り時間をかけて楽しみながら続ける方が自然だと感じています。
このコラムもそうした発想から始めたもので、短いながらも文字だけで思いを伝えることを目指しています。「今どきコラム?」という自問自答がありましたが、いざ始めてみるときちんとした文章を書く能力が自分に欠けていることを痛感させられました。これを機に文章力を鍛えることで、少しでも皆様が読みやすいサイトにしていければと思います。アナクロニズムなMCFを今後とも見守ってください。
8話 カメラ目線文化
4月から長男が家を離れることになり、前夜リビングで家族のスナップ写真を撮りました。息子達が小さかったころは頻繁に写真やビデオを撮っていましたが、最近では撮る機会がめっきり減ってしまいましたので、我が家としては4人並んで撮った貴重な写真になります。
写真はその一瞬の切り取りであるにもかかわらず、見るたびにその場面や時代の記憶が鮮明によみがえります。家族の大切な思い出の数々を記録にとどめるために、息子達の「撮らなくていいよ」という反感にめげずにこれからもシャッターを押して行こうと思っています。
プライベートはこれくらいにして、ここから鯉釣りにおける写真について。オフ会や釣行記の写真で、私は鯉の写真よりも鯉と一緒に写った釣り人の写真を重視しています。記録するための検寸写真などは別として、どんな大きな鯉を釣ったとしても主役は鯉ではなく釣り人であり、その嬉しさ溢れる表情こそ写真に納めるべきと考えています。
フランスのシルヴァンさんと同行した時、ヨーロッパのカーパーはどうしてカメラ目線を嫌うのか聞いたことがあります。答えは、カメラ目線の笑顔は締りがなくて恥ずかしいからだそうです。国が異なれば習慣も異なるのは常ですので、ヨーロッパのこうした考えは尊重すべきですが、日本のカメラ目線の文化は決して恥ずかしいものではありません。むしろ感情をストレートに写真表現できますので、MCFでは今後も大いにカメラ目線文化を推進して行きたいと思います。
7話 趣味の世界
私は、プライベートタイムに仕事の話をするのは好きではありません。もちろん、仕事上の問題や悩みは人並みにあると思っています。しかし仕事は、自分が置かれた条件下でいかに最大の成果を産み出すかというものですから、自分にとっては重大なことであっても、その条件下にない人にとっては、他愛もないことが多いのです。
釣りの時も然り。したがって、MCFメンバーについては、それぞれどんな関係の仕事をしているかは知っていますが、どんな役職で、どんなことをこなしてなどということはほとんど聞いたことはありません。このコラムで以前話した通り、私は釣りそのものを楽しみたいわけですから、「何もわざわざ日常を引っ張らなくても」と思うのです。
こうした思いもあって、MCFのサイトにおいては、本人の希望があればハンドルネームで呼ぶようにしています。ご存知かとは思いますが、MCFに登場するハンドルネームの中には強烈な印象を与えるものも含まれています。私の感性を尺度にすると「煮込みマッチョ」さんはライト級で、「痔鳥オヤジ」さんはミドル級。そしてヘビー級はMCF常連さんの「はなくそまんきんたん」さん。
ハンドルネームとは裏腹に、日常生活においては皆様、きわめて真面目で立派な社会人のようです。鯉釣りに限らず、釣りで身を滅ぼした人の話なども時々聞きますが、どんなに入れ込んだところで所詮趣味は趣味。趣味の世界では、かの名作映画のように「スーさん、浜ちゃん」の関係が理想なのかもしれません。
6話 鯉釣りに求めるもの
鯉釣りに求めるものは人それぞれ違っていますが、釣技、釣果、プロセスのどれかに行き着く可能性が高いと考えています。最初は鯉の強烈な引きに魅せられて鯉釣りにのめり込む点では共通していますが、ある程度経験を積んでくると、次第に求めるものが違ってくるようです。サイトを運営するようになってから、多くの釣り人と知り合うことができました。その中で実感したことをお話します。
まず、釣技を求める人は、そのレベルを確かめるために競技会に参加するようになる傾向があります。スポーツ界を考えると、一般的に競技会で切磋琢磨することが全体の技術レベルの牽引役となり、道具の発展や競技人口の増加に拍車をかけます。鯉釣りの場合はまだそのような環境にはなっていませんが、世界大会が開催されていますので、日本からチャレンジする人も徐々に増えてくるかもしれません。
次に、釣果を求める人は、より大きいサイズの鯉を求めて釣り場に向かいます。満足するサイズの鯉が釣れるまで、ストイックに竿を出し続けます。しかしメーターオーバーなど自分の目標を達成するとともに意欲が衰退し、釣りを止めてしまうパターンも多く見受けられます。
最後にプロセスを求める人は、釣りそのものを楽しみます。私はおそらくこのタイプだと思います。もちろん釣果を出すことを諦めているわけではなく、単にサイズに対する執着心の違いではないかと思います。さてあなたは、釣りに何を求めますか?
5話 鯉釣り大使
栃木県には下野(しもつけ)新聞という地方紙があります。数日前、この新聞に「観光大使第1号に歌橘さん 足利市委嘱へ」という記事が載っていました。観光大使とは広く足利市のPRをする人で、当然のことながら県出身の有名人に期待がかかるわけです。
その大使になられた歌橘(かきつ)さんは、栃木県足利市出身の噺家、三遊亭歌橘さんです。15歳で噺家を志して三遊亭圓歌師匠(現在落語協会最高顧問)の門をたたき、学業と修行を両立させながら努力を重ね、32歳で真打に昇進しました。現在33歳。
ところで歌橘さんの趣味が鯉釣り。昨年、芸能界鯉釣り軍団「TEAM TURIKICHI」を結成し、圓歌さんが顧問、歌橘さんがキャプテンになりました。噺家さんの他にプロレスラー伊東竜二さんもメンバーで、豪華な顔ぶれとなっています。
現在、歌橘さんとはメールを通じて交流させていただいてます。MCFメンバーのハンドルネームの慣例に従って、失礼を省みずに歌橘さんを「カッキー」と呼ばせていただいてます。カッキー軍団と合同オフ会を約束しましたが、いつか本当に実現できることを期待しています。さらに勝手な期待ではありますが、カッキーさんが鯉釣り大使になってくださったら、きっと鯉釣りの普及に繋がるに違いありません。
4話 トライリンガル
都道府県の知名度ランキングで下位グループの常連である我が栃木県ですが、栃木訛りを全面に押し出したお笑いコンビのU字工事の功績などにより、最近は最下位を脱出しているようです。「日光(栃木県)は知っているが、栃木は知らない」という世間一般のとんでもない状況を打破するために、栃木県知事もこのコンビをバックアップしているようです。
17年前に栃木県宇都宮市に引っ越して来たころは、早口で語尾が上がる独特のイントネーションに対してとても違和感があり、時々理解できない言葉もありました。しかし、子供たちが学校に通うようになり、地元の方々と触れ合う機会が増えると、次第に栃木弁に馴染んできました。今は違和感も消え、自分では栃木弁を話すことはできませんが、ほぼ100%理解することができるようになったと思っています。
ところで、この春で茨城県の水郷に釣りで通い始めてから9年になります。最初はぼらひでさんに誘われて、「遠いところだなぁ」と思いながら一念発起して出向いたわけですが、当時なかった北関東自動車道も一昨年暮れに栃木・茨城間が開通し、気軽に行けるようになりました。時間的に近くなっただけではなく、茨城県の地元の方々との触れ合いを通して、この9年間で次第に親近感が増してきたように感じています。
北関東以外の方からすると、栃木と茨城は言葉がほとんど同じように聞こえるかもしれませんが、実は全く違っていて、特に水郷の地元のお年寄りが話す生粋の茨城弁は、今でも半分くらいしか理解することができません。ある時、地元の方と会話した後で、同行した江戸っ子こぶちゃんに「今の話わかった?」と聞いたところ、「全くわからなかった(笑)」だそうです。私がこれからさらに水郷に通って茨城弁を完全にマスターしたら、栃木弁、故郷の秋田弁と合わせてトライリンガルになります。
3話 和魂洋才
出版界について私は素人ですが、雑誌の表紙が発行部数に大きく影響することは誰でも知っています。書店に並んでいる釣り雑誌の中で、少し前まではコイ釣り雑誌がひときわ垢抜けない存在でしたが、今やフライやルアーフィッシングに匹敵するほどのイメージに変貌しました。それに伴って、「鯉師」という呼び方から「Carp Angler」へと変化しつつあります。海外ではこの他に「Carper」や「Carpist」という呼び方も使われますが、こちらはまだ国内では馴染みが薄いようです。
雑誌のイメージが明るくハイセンスになると、当然新たなファンを掘り起こすきっかけになり、特に若い世代の獲得が期待されます。今のところ私のテリトリーではまだ世代交代のようすは見受けられませんが、緩やかに状況の変化が現れるかもしれません。自分の子供と同世代のアングラーが今後増えてくるのでしょうか。
雑誌の活性化とともに、昨年から大手釣り具メーカーによりユーロスタイルのタックルが販売されるようになりました。付随して様々な釣り用品もラインナップされ、今までよりも圧倒的に選択肢が増えてきました。私は昨シーズン、PVA製品やランディングネットを購入し、自分のスタイルに取り入れました。最近では、水郷某所の特殊な場所に対応できそうなロッドポッドに興味を示しています。
こうして徐々に和魂洋才が進んで行くわけですが、スタイルはどうであれ、肝心なのは如何に釣りを楽しむかです。「鯉師」であるべきか「Carp Angler」であるべきかなどのこだわりは、私の中には全く存在しません。皆様は、どのように感じているでしょうか。
2話 冬の間の釣り師
人によっては「鯉釣りにオフはない」と言います。私の場合も1月から2月にかけて隅田川などで寒鯉釣りをしますが、春、秋に比べると明らかに釣行日数は減りますので、冬は実質的にオフといえるかもしれません。
冬の間も釣りのことが頭から消えることはありません。釣りに行かない分時間があるわけですから、タックルや餌、仕掛けなど昨シーズンの反省を元に春に向けてさまざまな思いを巡らすことになります。そんな釣り師の心を見透かしたように、この時期にフィッシングショーが開催されます。古くなりますが、東京ビッグサイトで開催していた時代に、私は子供を連れて二度ほど見に行ったことがあります。
ショーなどにも出かけなくなると、完全にインドア・フィッシングになります。インドアといっても室内釣堀という意味ではなく、家に居ながらにして釣りの様々な妄想に浸るわけです。その挙句にインターネットで欲しいものを見つけては、ポチッと購入ボタンをクリックします。数日後にめでたく到着し、わくわくしながら開梱していると、「それいくらしたの?」とカミサン。少し値が張る時は後ろめたさがあるせいか安めの値段を言う自分。カードで買っているので、どうせ後で引き落とし額がバレるわけですから、相手も聞いた値段から何割増しかに受け取っている様子。
こんな子供じみたやり取りもすべて見透かされているかと思うと、冬の間の釣り師ほど愚かな者はないかもしれません。
1話 古希を迎えた時
今年も叔父から年賀状が届きました。昨年孫がふたり増えたことなどを書いた文面の最後に、「大好きな写真をブロッグに載せました。http://・・・」
長年神奈川県に住んでいる叔父が、鎌倉の写真を撮り続けていることは知っていました。ずいぶん前に「数千枚撮り貯めした鎌倉の写真を使ってホームページを作ろうと思うんだ。」当時叔父は、間違いなく還暦を過ぎていたと思います。
叔父のブログを覗いてみると、日々身の回りで撮影された樹木や花の写真の数々。失礼ながら、この年代でブログを始めたことよりも、テーマが過去の財産である鎌倉の写真ではなく、日常の新たな発見をアップし続けていることに驚きました。
人間はいくつになっても新たなことにチャレンジし、クリエイティブな生活を送ることができると人生の先輩から教わっているような気がしました。現在叔父は73歳。私も古希を迎えたとき、現役のウェブマスターでありたいと思っています。