50話 夢・絆・やすらぎ
今回は、少し哲学的な話題に取り組んでみたいと思います。私は時々某フォーラムで、継続的に業績を上げている企業の幹部や学者から経営哲学のお話を聞く機会があります。その中で共通して口にされることを集約すると、「人が能力を最大限に発揮するのは、自発的に活動している時」この誰でもわかっていることが実現できない例は山ほどありますが、それは何故でしょうか?人が長きにわたって自発的に動くとは、どういうことなのでしょうか。
この問題を趣味の釣りに適用して、私なりの解釈をしてみたいと思います。生涯を通じて取り組む趣味には、誰かが要求した訳でもないのに、驚異的なパワーを注ぐことができます。鯉釣りにおいても例外ではなく、釣りをしない人から見ると、私たちはどん引きされるくらいの情熱を傾けています。何故そこまでできるのでしょうか? 私は「夢」「絆」「やすらぎ」がキーになっているのではないかと考えています。
「夢」はモティベーションをハイレベルに維持させてくれます。「いつかモンスターを釣りたい」こうした夢があるからこそ、たとえ非効率だとわかっていても、貴重な時間を費やして釣り場で糸を垂れます。次に「絆」。人は誰かとともに歩んでいると感じたり、誰かのために行動したりする時、驚く程強くなります。最後に「やすらぎ」。やすらぎはエネルギーの補充に役立ち、人を優しくしてくれます。MCF Japanのコンセプトは「やすらぎ」を最上位に置いています。
エネルギッシュで・強く・優しい心を併せ持った時、人は信じ難い力を発揮すると考えています。ここをご覧になっている皆様も、ご自身を振り返ってみて下さい。もしあなたの釣りが「夢」「絆」「やすらぎ」のどれかが不足しているなら、釣りは一時的な趣味に終わってしまう可能性があります。逆にすべて持っているとしたら、たとえ趣味に時間を使うことができない事態が訪れても、いつかまた再開することができるでしょう。
49話 日常の面倒なこと
私の日常生活では、よく車が話題になります。その背景として、栃木県は完全に車社会であることが挙げられます。エコカー主流の時代、未だに古い4WDに乗っている私はこんなことをよく聞かれます。『アウトドアとか趣味なんですか?釣りとか?』ここでかつては「釣りをやるんですよ」と答えていましたが、最近はそう答えないようにしています。
「釣りが趣味」と答えていた頃は、大体次のようなパターンにはまりました。『鮎ですか?もうすぐ解禁ですね。』栃木県は鬼怒川や那珂川流域で鮎釣りの名所がたくさんあるため、釣りに詳しくない人でも鮎釣りに関しては知っています。「いや、そうじゃなくて鯉釣りです。」『えっ、鯉ですか?食べるんですかぁ?(気持ち悪そうに)』「いえ、食べないんですけど、釣るのが楽しみで・・・。」『食べないのに釣るんですか?(うさん臭そうに)』ここまで来ると、もう会話が苦痛になって来ます。内心は「あなたに1から説明するのは勘弁してくれ・・・」
鯉釣りに対する世間一般の認識は、『浮子も使わず竿を立ててじっと待っているだけの暇つぶし』『どこの池や川にでもいる鯉を釣るダサイ釣り』『口うるさそうなオヤジがやる釣り』『沢山竿を並べて場所を占拠する非常識な釣り』などなど。鯉でこんな感じですから、さらに青魚になるともう訳の分からない会話になってしまいます。『青魚?知ってる!新幹線が利根川を渡る時ぴょんぴょん跳ねるやつでしょ。』私は内心「それは連魚っ!」とツッコミを入れています。
そうしたことから、最近はこうしたパターンの会話をしています。『アウトドアとか趣味なんですか?釣りとか?』「釣りも少しやりますけど、ネイチャーフォトが趣味です。」『ネイチャーフォトですか。確かにオフロードを走りそうですね!』そんな訳で私の日常生活圏では、私の趣味が釣りであることを知っている人はごくわずか。面倒なことを避けるようになったのは私が年を取ったというべきなのか、それとも処世術というべきなのでしょうか?鯉釣りの楽しさを世の中に伝えることは、日常生活圏という狭い範囲ではなく、インターネットを通して世界に発信することで実現して行きたいと思います。
48話 リニューアルを振り返って
約1年かけてMCF Japanのリニューアルを完了することができました。某ブロガーさんから思いがけなくお祝いのメールを頂き、驚きとともに大変感謝しています。今回は、一連のリーニューアルを振り返ってみたいと思います。
リニューアルを思い立ったきっかけは、MCF10周年ということもありますが、ウェブデザインが時代にそぐわなくなったことが挙げられます。この十年間でパソコンの大画面化が進み、それに伴ってウェブページは横幅を有効に使うことが可能になりました。そのため、従来はhtmlだけで基本的なデザインをしていましたが、CSSを使うことでより高度なページレイアウトをしてみたくなりました。そこで、デザインツールを最新のソフトに切り替えて、かつてはプロレベルのウェブデザインを簡単に行うことができる環境にしました。
また、従来のデスクトップWindows PCからMacBook Airに乗り換えました。これで環境は十分になったわけですが、ひとつ不安なことが浮上しました。それは今までGoogleなどの検索で上位に表示されていたページが完全にリセットされてしまうこと。同じ検索をかけても下位に表示されればいい方で、最悪は表示されなくなることが考えられます。今までの実績を踏襲して検索で表示され易いページ構成も一時考えました。しかし、そうした目の前の利益にこだわってウェブデザインに制約をかけるのは、長い目で見て得策ではないと思い直し、過去の実績をすべて捨てることにしました。
さて、リニューアル中に「仕掛けのページを見たいのでなんとかして下さい。」というメールを頂き、該当ページのファイルをメールでお送りしたことがありました。なるべく早く復旧させたい気持ちはありましたが、旧サイトは約800ページで構成されていましたので、復旧に恐ろしい程の時間がかかることがわかっていました。しかし先のことばかり心配していては何も始まらないので、まずはリニューアル完了の目標を1年後と決め、あとは作業時間をできるだけ確保するようにしました。幸いノートパソコンにしたお陰で、釣り場や長期出張先のホテルなどどこでも作業できるようになり、その結果予定通り4月に完成することができました。
今回リニューアルしたことで、おそらく今後10年間くらいはこのデザインのままでいけるのではないかと思っています。10年前に今の状況を想像することができなかったように、今10年後の世界を想像することはとても困難です。しかし、10年後も変わらず仲間と楽しく釣りをして、MCFの更新を続けられる自分でありたいと願っています。そして、サイト運営を通じてより大きなネットワークに発展できれば、この上ない喜びとなるに違いありません。皆様のご支援を、今後とも宜しくお願いします。
47話 魚の福祉
日頃鯉を釣り上げたときは、マットに載せ暴れるのをなだめてすばやく鈎を外すように心掛けています。この時、心の中ではいつも、「痛い思いをさせてすまんな。ちょっと我慢してくれ」とつぶやいています。ところで、魚は本当に痛みを感じているのでしょうか? 一般に鈎掛かりする口周辺に関しては、「痛みを感じない」と考えている人と、「痛みを感じている」と考えている人がいるようです。
魚は声を発することも無ければ、顔の表情を変化させることもないため、いったいどれほどの苦痛を感じているか知ることができません。もしも表情が変化するとしたら・・・釣り以前の問題として、食卓に上がった焼き魚の顔が、もしも苦痛に歪んでいたとしたら、とても箸を出そうと言う気にならないでしょう。魚は哺乳類と形態が大きく異なるために、犬や猫などのペットに対するような感情移入をすることなく扱うことができます。
昨シーズン、この疑問に答えてくれる本に出会いました。「魚は痛みを感じるか?」(ヴィクトリア・ブレイスウェイト著 高橋洋訳 紀伊国屋書店 ISBN978-4-314-01093-1)魚類生物学者がいくつものデータを総合的に解釈した結果、「魚は痛みを感じる。」と結論づけています。たったこれだけのことが今まで明言を避けられていた背景には、動物愛護・動物保護という立場と、これとは対極とも言える釣り・漁業・養殖の立場との不整合の問題がありました。魚の痛みに関するテーマは、世の中に対する影響があまりにも大きいため、パンドラの箱のようにそっと置いておくべき課題だったのです。
この本ではさらに踏み込んで「魚の福祉」という概念を示し、「キャッチアンドリリースの倫理」「釣りにおける魚の福祉の実践」について述べています。リリースすることの是非は世界的に主張が二分しているいるようで、この本の中では双方の意見を提起しています。魚の福祉のためには、バーブレスフックを使うことや小さめのフックを使うこと、ナイロン製・ゴム製の無結節網を使うこと、細胞ダメージを少なく水に返すことなど、普段私たちが考えていることが推奨されています。私たちは、鯉に憧れと尊敬の念を抱いているが故に釣るのであって、傷つけるために釣っているのではありません。「魚の福祉」という概念について今後さらに追求し、釣りの手法の進歩に少しでも貢献できればよいと思います。
46話 大胆予想
9月1日をもって、MCF Japan10周年となりました。開設した2002年を思い起こすと、スポーツではサッカー日韓ワールドカップ共催、科学技術においては田中耕一さんのノーベル化学賞受賞がありました。インターネットでは個人サイトが乱立し始めた時期で、MCF Japanを開設した時点で12の鯉釣りサイトにリンクさせて頂きました。サイト開設後のヒストリーについては、MCF JapanのConceptのページに詳しく書いていますので、興味がある方はご覧下さい。
この10年間で国内の鯉釣りは大きな変化がありました。それまで吸い込み釣りが主流だった巨鯉釣りに、タニシ餌などの喰わせ釣りが導入されました。また、2004年頃からボイリー釣法が試みられ、その後ヨーロッパからタックルが輸入販売されるようになりました。さらにはヨーロッパで開催される鯉釣り大会に参加する釣り人も現れました。社会状況と歩調を合わせるように、一気にグローバル化が進んだ感じがします。
この先10年間の鯉釣りを大胆に予測してみることにしましょう。タックルはさらに洗練され、軽量振り出しの短竿が主流になっていきます。リールはスプールの回転を検出して電子的に当たりを検知する機能が内蔵され、世界の鯉釣りリールのスタンダードとなります。ヨーロッパではスピニングが、北米ではベイトリールが主流となり、器用な日本人はスピニングとベイト両方を使います。鯉釣りは競技としての釣りとレジャーとしての釣りに棲み分けが進んでいきます。
競技においては使用する加工餌の規定が厳密になり、プレーヤーのテクニック勝負の側面が明確化されてくると考えられます。レジャーの鯉釣りにおいては、練り餌よりも喰わせ餌のほうが多岐にわたって市販されるようになり、ゲーム性がますます加速します。生き餌は一部のマニアによって受け継がれ、伝統的スタイルとしてベテラン釣り師によって使用されます。以上、根も葉もない私の勝手な妄想でした。
45話 別作和竿隅田川スペシャル
昨日、カッキーこと三遊亭歌橘師匠の独演会に行ってきました。会場は足利市。自宅から車で40~50分で行くことができます。私のスケジュールが急に空いた関係もあり、常々行ってみたいと思っていた高座を楽しむチャンスが到来しました。以前このコラムでも紹介したことがあるカッキーさんですが、MCFの隅田川オフ会にも来て下さったことがあり、釣りの方で交流させていただいています。寄席が終了してからご挨拶させていただき、年明けのオフ会に是非いらして下さるようお話しました。
さて隅田川の釣りですが、私は特に寒鯉釣りに魅力を感じています。餌は冬場の特効餌として知られるゴカイ。最近は釣具屋で入手しにくくなっているとのことで、MCFメンバーで隅田川、荒川流域に住む並継のこぶちゃんが天然のゴカイを採っていつも提供してくれます。そのこぶちゃんの趣味のひとつが江戸和竿作り。これまでへら釣りから江戸前釣りまで広く釣りを嗜んだことがあり、行き着いた先が巨鯉釣り。和竿の調子に長年慣れているため、鯉釣り竿も振出ではなく並継を使っています。
そのこぶちゃんの和竿師の心を揺さぶるのが、隅田川のテラスでした。テラスには安全のための手すりが全面的に設置され、さらにそこから垂直にコンクリートで固められています。したがって取り込みの時は手すりを越えて、ほぼ足元の下1mから1.5mに鯉を寄せる必要があります。こんな場所で活躍するのが鯉釣りでは珍しい6尺くらいの短竿です。スムーズに足元まで寄せられるしなやかさと、鯉の強烈な走りをしっかりと受け止める腰の強さが要求されます。こぶちゃんはグラスロッドのブランクスを使い、これまでに「隅田川スペシャルⅠ、Ⅱ、Ⅲ」の3竿を完成させました。
さらにこの冬デビューするのが、別作和竿隅田川スペシャル(仮称)です。ついにグラスロッドを卒業して、竹素材の本物の和竿を作り上げました。制作におよそ一年を費やし、竿の機能と装飾に徹底的にこだわりぬいた作品です。私もまだ拝見していませんが、過去に制作した隅田川スペシャルⅢを見ると、もはやタックルなどという乾いた言葉はふさわしくなく、工芸品と呼ぶべきだという気がしています。今度デビューする隅田川スペシャルとはいったいどんな和竿に仕上がっているのか、今からとても楽しみです。
44話 世界一のこだわり
その筋では世界的に活躍されている先生と、渡航先でご一緒しました。日本の先生ですが、先週はドイツにいらして、一晩だけ東京に立ち寄り、そして私の渡航先にいらしたとのことでした。そんな先生と古くからのお知り合いである北米の先生が今年のノーベル賞を受賞されたとかで、ご自分のことのように喜ばれていたのが印象的でした。北米はもちろん、ヨーロッパ各国、インドなど世界の国に一線級のお知り合いをお持ちですので、その中から受賞者がでるのも不思議なことではありません。
先生とのミーティングを済ませた頃、すでに外は暗くなっていました。「mi○さん、足がないでしょうからホテルまでお送りしますよ。」とわざわざご自分でハンドルを握って送ってくださいました。その車中での会話ですが、食べ物の味の話からはじまり、さらに発展して、商品全般の質やメーカと消費者のこだわりまで話が盛り上がりました。先生がおっしゃるには、世界でもっともこだわりを持った国民はドイツ人と日本人なのだそうです。残念ながら私はドイツには行ったことがないのですが、20年以上ドイツ製の某電気製品を愛用していますので、全くうなずけるご意見だと思います。
ところで今回の渡航先で毎日のように買い物をしていた大型スーパーの一角を占めているのが釣具。そこにあるリールはすべてダイワ。釣具専門店だけではなく、こんなところまで日本メーカのリールが浸透しているのを目の当たりにすると、今更ながら日本製品の品質の良さとコストパフォーマンスの高さを実感します。日本人とドイツ人は、生真面目で物事を徹底的に追求する国民性が似ているのではないかと私は思います。
さて、今成田から宇都宮に帰るバスの中です。私が最もこだわりを持って買っているものといえば、言うまでもなく釣具。この週末は移動でつぶれてしまったわけですが、来週はできればこだわりの釣具を持ち出して過ごしたいと考えています。ちょっと油断した隙に秋のシーズンが終わろうとしています。たとえ短時間でも趣味に没頭する時間を大切にできたら幸せです。おっと、そういう私のリールは日本製でもドイツ製でもなく、スウェーデン製でした。失礼!
43話 ギャンブル性とゲーム性
今シーズンは東日本大震災の影響で東北や関東では釣行回数が減った方が多いのではないかと思います。もちろん私もその一人で、春は水郷に向かうことなく過ぎてしまいました。9月上旬にやっと北浦に足を運んだわけですが、今度は諸事情で10月から海外と日本を行ったり来たりすることになり、秋のシーズン半ばで竿を納めることになってしまいました。長い人生、こんな年もあるんだろうと現実を受け止めてはみるものの、やはり少し物足りなさを感じているこの頃です。こうした状況から、秋の荒川オフ会にも参加することが難しくなりました。
ところで、荒川オフ会はMCFメンバーとの大切な語らいの場であることはもちろんですが、もうひとつ別の側面があります。私にとって荒川の釣りは、スタンダードな鯉釣りに感覚を修正するという意味合いがあります。水郷の釣りはご存知の通りタニシ釣法に固まっています。この釣法は、私が知る限り世界中でも水郷のみで行われている非常に特異な釣法です。水郷の生態系が変化しない限り、タニシ釣法は最も効果的な大鯉釣法であり続けるものと思います。
今更ではありますが、タニシ釣法の特異性を挙げると次のようになります。餌の選択の余地がなく、餌の打ち返し回数が一日に2~3回と異常に少ない。コマセの都合から、岸寄りの近場を集中的に攻める。当たりが遠いためひたすら待ちの釣りとなる。このように色々な面で選択肢が少ない釣法ですが、最大の魅力は誰にでも大物のチャンスがあるということ。一発大物の期待がかかるギャンブル性の高い釣法と言えます。そのため竿数が多くなり、車中泊で長時間の釣りとなります。
一方、荒川の鯉釣りは対象的です。タックルを担ぎ込みし、竿を二本セットしてその日の餌をあれこれと考え、しばらく当たりがない時は別の餌に切り替えます。潮の満ち引きに応じて当たりの時間を予測し、前もって餌を打ち替えるなどして、通常は1日で結果を出すことになります。荒川の釣りは水郷に比べ選択肢が多く、ゲーム性の高い釣りと言えます。どちらが楽しいかは一概に言えませんが、ゲーム性を追求する方が世間では広がりつつあります。しかし、自分としてはブームに惑わされることなくギャンブル性とゲーム性の両方を楽しんで行きたいと考えています。
42話 一本飲む?
とある事情で、8月は三週間近く海外にいました。海岸のホテルに滞在していましたので、釣りをしている人のようすもよく見えます。海岸は岩場で、リールを使ったちょい投げや長めの延べ竿でウキ釣りなど、思い思いに楽しんでいます。ある休日の夕暮れ時に、カメラを持って海岸に出てみました。海とは思えない穏やかな風が心地よく吹いています。何枚かカメラに風景を納めた後、少し離れた海岸を見ると釣りをしている二人がいました。竿が二本立てて置かれていますので、明らかにぶっ込み釣りです。
自然に足が動き出し、私のほうから「ハーイ!」と挨拶。一人はやたらと身長が大きく、もう一人は百数十キロありそうな巨漢のコンビです。「ハーイ!」巨漢の方が岩場に腰をかけて挨拶してくれます。「見せてもらっても構いませんか?」と尋ねると、すかさず「OK!」。13フィート前後の竿にスピニングリールを付け、一本は岩の隙間に直接、もう一本は岩の間に立てた塩ビ管に竿を差し込み、二本とも垂直に近く立てて当たりを待っています。ラインは20ポンドクラスに見えます。「大きいのは出ました?」「いや、今日はまだだよ。一本飲む?」巨漢がビンを一本差し出します。
岩を一段降りて男たちのそばに寄りました。「そこのホテルにステイしているのか?」と巨漢の男。「そう、もう一週間くらいステイしてる。」「おー、それは長いな。」話しながら足元を見るとバケツにバッテリー式のブクブクを入れ、その中で10cm位の魚が20、30匹泳いでいます。一瞬これは餌なのか釣った魚なのか迷いましたが、気分を害さないように聞いてみました。「餌は何を使っているんですか?」日本ではいつも自分が聞かれるフレーズです。「そこのベビーフィッシュだよ。」バケツを指差して巨漢が言いました。ということは、そこそこ大きい奴を狙っていることになります。
ここに来て10分くらい経ったでしょうか。ふと気が付くと、日が暮れてだいぶ足元が見難くなってきました。男たちはヘッドライトを準備し始め、明らかに夜釣りの態勢。真っ暗になる前に岩場を戻らないといけないと思い、竿に当たりがないまま話が途切れたタイミングで「それじゃサンキュー、グッバイ」と言うと、向こうからも「グッナイト」。普段とは違ったシチュエーションではありましたが、釣り場での心躍るひとコマでした。
41話 HPづくりの楽しさ
先日ある方に、どうしたらホームページ(HP)を長く続けられるかと聞かれました。その方は一緒にふらりと海外旅行をする数人の仲間がいるそうですが、その仲間というのが多国籍軍なのだそうです。日本のメンバーは自分だけで、他のメンバーは英語圏。連休が近づくと、今回は「北米のどこそこに集合!」といった乗りで旅行がはじまり、ひとりで気軽に出発するのだそうです。ちなみにその方は女性。したがってインターナショナルな女子会というわけです。しかしまだブログも書いたことがなく、HPには少し関心があるようです。
本人が言うには、自分は英会話が苦手で、ほとんど上達もみられないから英語の才能がないとのこと。それなのにこうした大胆な行動をとるわけですから、ホームページネタには事欠かないだろうと想像しています。この春のゴールデンウィークの旅行は、アメリカ某所に到着した後、みんなでどこをどう回ってきたのか、帰国してから途中の記録を繋ぎ合わせてやっとわかったといいます。ご本人の名誉のために付け加えておきますが、この方は天然系ではなく、バリバリに頭の回転が速い理系女子です。
HPを続けるポイントについて、私が思っていることを正直に答えました。まず大事なことは、HPを作るために特別なことをしないこと。普段自分がやっていることをそのままコンテンツにすることで、無理なく続けることが可能になります。私は鯉釣りをはじめたときからずっと短い釣り日記を書いていましたので、HPを始めてからあまり苦にしないで釣行記を書くことができました。もうひとつ大事なことは、アクセスを増やすための記事を書こうなどと思わないこと。これを意識しはじめると、よほどの才能がない限りすぐに息切れして更新がとまってしまいます。常に自分自身が楽しみながら書くことを忘れてはいけません。
HPはコンテンツをきちんと整理していれば、更新するほどに体系的なデータの蓄積が進んでいきます。これがブログと決定的に違うところです。しかも制作者の特徴が色濃く反映されますので、この世にふたつと存在しないものになります。MCFJapanを始めた時はページ数が50ページ程度だったと思いますが、9年かけてMCFメンバーで作り上げた結果、現在は800ページ余り。時々自分が書いた内容を忘れていて、MCFを読み直して勉強することもあります。現在はブログ全盛期ですが、HPづくりの楽しさについて気がついてくれる仲間が少しでも増えてくれることを祈ります。