30話 ガラパゴス化
中東某国における反政府デモのニュースが報道されていますが、デモを拡大させている原動力のひとつとして、フェイスブックが取り上げられています。現時点では世界最大のSNSといわれていますが、日本においては先進国の中で普及率が低いそうです。その理由は、個人情報を公開することに対する抵抗感が強いためだとも言われています。世界中に人と人の繋がりを拡大していくためには実に有効なツールであり、私が情報交換をしているヨーロッパのアングラーの中にも利用している方が何人かいます。
一般的にフェイスブックは、友達が増えるほどにプライバシーがおろそかになる危険性が指摘されています。顔写真、本名(フルネーム)、メールアドレス、誕生日、出身校、勤務先情報等を入力しますので、一歩間違うと情報を悪用されかねません。しかし、そうしたリスクよりも遥かに大きなメリットが期待できるのはビジネスユースだと言われていますが、実際にフェイスブックで得た人間関係が新たなビジネスチャンスに繋がる確率は未知数であることも事実です。
一方で趣味の世界ではどうかと考えてみますと、少なくとも私の場合は必要な情報といえば顔写真とメールアドレスくらいのもので、それ以外はどうでもいい余計な情報です。お互いハンドルネームがわかっていれば、一緒に釣りをしたり、情報交換する上で何の支障もありません。残念ながらMCFでは、フェイスブックを活用する機会を今のところ見出していません。
もし私が平均的な日本人的感覚であるとするならば、フェイスブックは今後日本ユーザーが増えるとしても世界から見れば低普及率にとどまる可能性が大きいと考えています。日本人的なのは、ハンドルネームで不特定多数と関係を築きくか、本名や個人情報を公開してまでも少人数で深い交流をする方向を目指すかいずれかではないかと思います。今後世界の流れとは異なって、日本独自のSNSの形態が発展するかもしれません。この分野においても、日本のガラパゴス化が起こるのでしょうか。
29話 相容れないもの
鯉釣りとカープフィッシングの相違点についてはすでに皆様十分ご存知だと思いますが、私の予想としてはいずれ融合していくものと考えています。ところが、ひとつだけ融合しきれないのは、釣った魚の大きさ表現です。日本は全長が主流であるのに対して、ヨーロッパは重量で記録されます。ヨーロッパの釣り人と情報交換していても、この点だけは相容れないものを感じています。
日本では同一魚種であればほぼ同一体型であるため、大きさが直感的にわかりやすい全長で表現されるのは理にかなっています。一方、漁師さん達の世界では重量で表現するのが当たり前で、商業取引するうえではまとめて重量を測定する方が合理的です。そうした世界とは一線を画す意味でも、スポーツフィッシングとしては全長で記録したいという考え方があっても不思議ではありません。
ヨーロッパでは、カープと言っても色々な体型のものがいるため、画一的に長さで表現するのは不適切と考えられています。コモンカープとミラーカープは、体型の観点からはもはや同一魚種とは言い難く、釣果を重量で表現するしかないですし、特に大会においては、重量表現が納得感が高いと考えられます。大会がより国際化していくとすれば、重量表現に統一されることでしょう。
国内の数多くのカープフィッシング系ブログを見ると、タックルはユーロスタイル、釣果は全長表現というの例が多いように見受けられます。インターネットで視覚的に大きさを伝えるには妥当な選択でしょう。MCFにおいても、当面は従来通りの全長を主体にし、必要に応じて重量を併用する方向でいきたいと考えています。
28話 論より証拠
1990年代は巨鯉釣りが大ブレークした時代です。当時流行した餌は、水中でばらけ易く、長時間底に残りやすい大粒の餌を基本に、集魚効果を高めるためのパウダー状の餌をブレンドするのが基本でした。この方向性が正しいことは、釣り餌メーカーが販売した鯉の水中映像を収録したビデオで検証されています。それまで、練りエサといえば”耳たぶくらいの硬さに練って仕掛けに付ける”というイメージが主流でしたので、餌のコンセプトと水中映像は大変参考になった記憶があります。
その後、インターネットが普及して海外の情報を入手しやすくなりました。特に有難いのは鯉の食餌行動映像を簡単に入手できるようになったことです。想像するのと見るのとでは、当然のことながら大きな違いがあるもので、それまで語られていた通説が必ずしも正しくないことがしばしば見受けられます。そうなると、仕掛けに対する考え方も徐々に変化することになります。
2000年代に入ってからヘアリグを使い始めましたが、これはフッキングし易い仕掛けの代表格だと考えていました。ハリのフトコロが空いているため、鯉に吸い込ませさえすればかなりの確率でフッキングするイメージを持っていました。ところが水中映像では、一旦吸い込んでも違和感があるためにすぐに吐き出されるシーンが珍しくありません。ということは、今流行しているリグを鵜呑みにしているだけでは、折角到来したチャンスを逃していることになりかねません。
これまでは切れの良さでハリを選定し、吸い込み安さでハリスを、そしてフッキングし易さでオモリを決めていましたが、これはあくまでも自分の中の「想像」と「経験」が基準となっています。色々な能書きをたれるよりも、食餌行動を冷静に観察して、そこから得られる情報を元に今一度仕掛けを考え直してみる必要性を感じています。得られた映像情報から何かを見出して新しいものにチャレンジする。これもまた鯉釣りの楽しみ方のひとつかと思います。
27話 冬の汽水域
今朝玄関先の睡蓮鉢を見ると表面に氷が張り、氷を通して金魚がじっとしている姿が見えました。このところ栃木県の最低気温は連日氷点下となっています。日中、氷が融けたところを見計らって餌をパラパラあげると、勢いはありませんがスーッと寄ってきてパクパク食べます。
例年初詣に行く大前神社の池の鯉は、一か所に群れてじっとしていて、まるで体を寄せて暖めあっている動物によく似ています。おそらく自然界の鯉も、水温が低い時は同じようにしてじっと耐え、水温が上昇すると餌を食べて厳しい季節を過ごしているのではないかと思います。
ところで、汽水域ではゴカイを使った寒鯉釣りが本格化する季節になりました。私がこの釣りを知ったのは今から9年前になります。教えて下さったのはMCFのぼらひでさん。寒い時期にそんなに釣れるわけがないじゃないかと思いつつ、ぼらひでさんの案内で荒川に行きました。この日は運悪く雪が降り出し、全く釣れないまま終了しましたが、翌年は天候に恵まれて爆釣となりました。
日帰り釣行で80cm台から90cmクラスの鯉も釣れるので、春から秋よりも冬の方が良型を上げるには効率が良いと思っています。しかし一方で、釣具屋ではゴカイの入手が難しくなったことと、鯉が集まる場所が限られるので釣り場を探しあてるまでの努力が必要といったことが挙げられます。良い釣りをするには、それ相応の努力が必要であることは寒鯉に限ったことではありませんが、その季節しかできない釣りを楽しむことは、とても味わい深いものだと思います。
26話 充実感
このコラムを初めてからほぼ一年になります。始める前は、すぐにネタが無くなってしまうのではないかと思ったりもしましたが、なんとなく続けることができました。一年間お付き合いいただいた方々には、深くお礼申し上げます。さて新年を迎え、今年の抱負など語るのが一般的なのでしょうが、MCFのサイトの中で日常的に自分の思いをお話している気がしますので、ここでは釣りから離れたお話をしてみたいと思います。
暮れのボーナスが入ったかと思ったら、いつも通りあっという間に各方面に消えて行き、手元のほんのわずかな残高を見つめながら、何か自分にご褒美など買ってあげたいものだと思ってネットを調べました。当然ロッドやリールも検討しましたが、如何せん1セットでは済まない話になるのでこれは予算オーバーで断念。
次なる候補は、カメラレンズ。ご存知の通り、私はネイチャーフォトも趣味のひとつとしています。釣り具ほど重度ではありませんが、軽度のレンズフェチです。決してカメラフェチではないところに注意して下さい。同じじゃないかとおっしゃるかもしれませんが、画像を最も大きく左右するのはカメラ本体ではなくレンズですので、敢えてこだわっています。
今回購入したのはEFS10-22mm/f3.5-4.5というレンズです。カメラが少し好きな方ならお分かりかもしれませんが、超広角レンズでありながらディストーションが少なく、風景写真ファンの中では非常に人気のあるズームレンズです。カメラに装着して、このレンズで撮られるショットをイメージしていると、なぜかとても充実した気分になります。レンズには不思議な力があるものだと思います。
25話 WCCの事実
この週末は単独で水郷に向かう予定でしたが、台風が日曜日の朝に関東を直撃する可能性があるとのことで、急遽中止としました。そこで土曜日は時間ができたので、久々にインターネットで海外のカープフィッシングを調査することにしました。その中から、注目すべきことを見つけましたので取り上げたいと思います。
フランスのマディーヌ湖で開催され、最近日本からも参加するようになったワールド・カープ・クラシック(WCC)ですが、日本チームの結果ばかり取り上げられることが多く、この大会の全容を正しく把握している方は少ないのではないかと思います。過去12回の優勝チームの記録をみると、なんと9回がイギリスチームです。他にはフランス、ポーランド、オランダのチームが1回ずつ優勝しています。イギリスチームの参加比率が極端に高いのではないかと思い、今年の大会の上位50チームをみたところ、イギリスは8チームでした。したがって、優勝率との相関は見られないようです。
ボイリーはイギリスで開発されたと言われています。ヨーロッパ北部に位置するイギリスは、鯉が大型に育ちにくい環境なのだそうです。それにも関わらす、今やヨーロッパの中でも特にカープフィッシングが盛んな国のひとつとなりました。他国開催の大会にも関わらず、高い確率で優勝チームを排出することができるのは何故でしょうか。
もしかしたら、イギリス人のカープフィッシングに対する飽くなき挑戦魂が、巨鯉を高確率で仕留めることができるボイリーを生み出し、そして世界的大会の優勝を成し遂げさせているのかも知れません。どんな世界でも、必死で考え実践する人間が多い国ほど発展を遂げるものです。また時間があるときに、さらに詳しく調査してみたいと思います。
24話 高機能化の落とし穴
今回は誰でも知っているリール、”ダイワ巨鯉40W”についてお話したいと思います。私が初めて購入したベイトリールがこれで、ラインカウンターの液晶表示がコンパクトに実装されていたため、機械式カウンターよりもスマートで大変気に入っていました。しかし、リールとロッドとのバランスの問題からそのリールを手放して、ABUのリールに切り替えました。リール自体に特に問題は感じていませんでした。
この秋のMCFオフ会で、久しぶりに中ソンさんのタックルを拝見したところ、巨鯉40Wを使っていたはずが、なぜか機械式カウンターのリールに変わっています。理由を尋ねたところ、カウンターの電池交換をすると、なんと1台当たり12,600円もかかることがわかったため、電池切れの前にオークションで売ったとのことでした。念のために私もダイワに直接確認したところ、使っているのはボタン電池ですが電池単体の交換はできず、ICモジュールごと交換しないと防水性能を保証できないということだそうです。
千円以下で腕時計が買える時代に、リールカウンターの電池交換に大枚を払う人がいるとは到底思えないのですが、一流メーカーがいったい何故これを良しと考えたのでしょうか?厳しい言い方かもしれませんが、開発努力を怠っているとしか思えません。魅力的な商品で愛用者も多いリールなのですが、高機能化の落とし穴を見た気がします。
最後に、現在このリールをお使いの方のためにお伝えしますが、ダイワによると1日50回のキャスティングで年間50日使うとして10年間電池が持つように作られているそうです。ただし、これは目安であって、10年保証ということではないので注意して下さい。MCFメンバーには、ダイワの想定をはるかに凌ぐペースで釣りをして電池切れを起こした人がいることの方が、驚くべき点なのかもしれません。そのメンバーとは、中ソンさんに電池交換の値段を教えた煮込みマッチョさんでした。
23話 ホームページの意義
言うまでもなくホームページ(HP)にはコンセプトやミッションがあり、それに沿って構成や内容が制作されます。鯉釣り系HPの例を挙げますと、最も多いのが釣果の公開を趣旨とするHPで、釣果写真や釣行記が中心的なコンテンツとなっています。また、Howto系のHPも割と多く、初級から中級者レベルをターゲットとしてタックルと釣法の解説を一般に行っています。こうしたHPの制作側の狙いと、アクセス側の要求が一致した場合は問題ないのですが、現実は必ずしもそうならない場合が多いように感じています。
具体的に言いますと、Howtoものは両者の狙いと要求が一致しやすく、手堅いコンテンツのひとつと言えまが、釣果の公開に関しては不一致がしばしば起こります。制作側は鯉の大きさや釣った時の感動を伝えることが狙いであるのに対し、アクセス側はどこで釣れたのか?どういった仕掛け、餌で釣れたのか?という情報入手を要求します。早い話が、「他人の釣果自慢にはあまり興味がなくて、自分の釣りに役立つ情報が欲しい。」というのが本音ということでしょう。従ってHPに巨鯉の写真だけをいくら掲載しても、一般的にはアクセスが伸びません。
ところで、HPを運営している端くれとして嬉しく思うのは、釣り場でお会いした方に、こう言われる時です。「miOさんのホームページを見ていると、自分が釣りに行った気分になるんです。」これほど嬉しい言葉はありません。たとえ一部の方に対してであったとしても、私達制作側の心が伝わったかと思うと運営の意義を改めて認識することができ、運営に関するモチベーションが上がります。
さらにここ数年間考えていることですが、MCFJapanと正反対のコンセプトの鯉釣りHPがあった方が面白いと思います。MCFは主観的なサイトですから、客観的なあらゆる情報を網羅したHPがあってもよいと思います。MCFの枠ではできないことを実現するHPの出現を待っていましたが、残念ながら今のところそうした動きはないように見えますので、自ら制作にチャレンジしていきたいと思います。来年を目処に制作を進めていきますが、成功するか失敗に終わるか、どうかしばらく見守ってください。
22話 野田さんもびっくり
MCFJapanのBooksで紹介していますが、私はカヌーイストの野田知佑さんのエッセイが大好きで、ほぼすべての作品を読んでいます。最近読んだのは、2010年に発行された「新・日本の川を旅する」(小学館)。約30年前の代表作「日本の川を旅する」と対比するように国内の川を下り、30年の時を経て川の風景とその流域に暮らす人々の生活の変化を語った作品です。72歳になられますが相変わらずご健在のようで、野田ファンのひとりとして嬉しい限りです。
国内の川の場合、水上からの風景にしばしば鯉師が登場します。川岸に竿を何本か並べてじっと当たりを待っている鯉師にとって、エサの投入点のそばを通るカヌーイストは邪魔な存在のようで、時にはカヌーに向かって石を投げられることもあったそうです。したがって、カヌーイストから見ても鯉師は敵対的な存在であることが多いようです。
ところが、今回の作品に登場する鯉師は今までと大きく変わっています。熊本県菊池川の章の一節です。「二本の竿を水平に並べておく組み立て式の台が水際に置いてある。よく見ると従来のコイ釣りとはまったく違っている。イギリス式の仕掛けだそうで見せて貰った。(中略)これからはコイ釣りもヨーロッパ方式の科学的なものになるのだろうか。」
野田さんもびっくりの鯉釣りの進化。野田さんの作品に限らず、これまで多くのエッセイや文学作品に鯉釣りが登場していますが、今世紀の作品にはロッドポッドが鯉釣りの象徴として登場することは間違いなさそうです。さてその時に描かれる釣り人は、紳士的に描かれるのでしょうか、それとも道具は変わっても今までとマナーが変わらない釣り人として描かれるのでしょうか。それは、私を含め、鯉釣り愛好者の普段の行動にかかっている気がします。
21話 「釣ること」の継続力
今年は異常なほどの猛暑が続いた夏でした。すでに9月の中旬に入ったというのに、昨日も日中は軽く30℃を超えました。とはいうものの、夜になって我が家の庭から盛大に聞こえる虫の音を聞くにつけ、確実に季節が変わっていることを実感します。
そろそろ秋の釣行を開始しようと準備を進めていますが、釣り人が少なくてのんびり釣りができるマイナースポットをこの秋も攻めてみようと、色々な場所に思いをめぐらしています。ただ少し気になるのは、ここ数年の自分の中での傾向ですが、シーズン初めのワクワク感が少なくなってきて、わりと淡々と釣りに向き合っている感じがします。たくさん釣りに行くよりも、一回一回の釣りを充実させたいという方向に気持ちが傾いている気がしますが、これは体力の衰えから来るものなのか、あるいは釣り人としての精神的な成長なのか、自己分析がし切れていません。
釣り場で色々な方と出会い、時には「これは到底真似できないな」と思う領域の方もいらっしゃいます。釣技は皆様それぞれ一定の水準を超えた方ばかりですので、それはそれですごいのですが、私が真似できないと思うのは「継続力」を持った方です。クラブに所属することもなく、大会に出場もせず、長年に渡って常に単独で釣り場に向かい黙々と釣果を上げ続ける継続力です。誰しもある程度の年数を重ねると、「釣る」ということに対するモチベーションがどこかで途切れがちになるものです。
この継続力を持った釣り人とは、皆様ネットでよくご存知の荒川のFさんです。隅田川で竿を並べさせていただいた時は、一匹釣れる度に、やれ大きいとか写真撮影だとか騒いでいる私たちのそばで、静かにそして恐ろしほどのペースで釣り続けるFさんに、次元の違いを見た気がします。Fさんのホームページは、現在ある事情から釣りとは違った内容に切り替わっていますが、長年親しんだ釣りサイトが再開されることを心よりお祈りします。