1989年に発売されたフルフィールド石鯛シリーズの中で、全長が最も短い振出竿です。ダイコーの歴史を紐解くと、これ以前に発売された短竿は、1980年に発売した3.95mの舟釣り用石鯛竿がありますが、自重が680gもありました。フルフィールドになると材質の進歩により、自重が435gと圧倒的な軽量化を達成しました。ダイコーでは4.1mのラインナップはこの竿が初めてです。このフルフィールド石鯛は、ダイコーが自社の石鯛竿の歴史を語る上ではずすことのできない名作と謳っており、現在の石鯛竿の原型です。
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写真では見えませんが、この竿をよく見ると、ダイコーのロゴが現在の「Daikoh」ではなく、「Dykoh」となっています。次のモデルから現在のロゴになったと思います。バットの部分は現代では見られなくなった、素材シート端のスプラインやラッピングテープ跡がそのまま残っていて、クラシックな雰囲気を感じます。石突は溝の深さがやや浅いものの、実用上は支障のない範囲であり、形状は大物とのやりとりでも全く問題のない腹当て感です。発売から20年近く経っており、かつて海で使われていた中古竿ですので、金属部分には所々腐食が生じていますが、石突に関しては時の経過を感じさせないしっかりした作りです。
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Dykoh FULLFIELD 振出石鯛 410M
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石突の形状、塗りいずれも気に入っている
フロントグリップはスパイラル状のラバーで、ラバーの光沢が製造時期により差があって残念ですが、汚れが拭き取りやすいラバーです。ガイドリングはSiC(シリコンカーバイドファインセラミックス)で、長年の酷使にも耐えられます。全般的に作りの粗さが目につきますが、この竿に関してというよりも、おそらく当時の技術レベルの問題だと思います。しかし、性能品質に関しては高い水準であり、安心して使うことができます。
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スパイラル状のフロントラバーグリップ
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ガイドリングは富士工業のSiCを使用
この竿で初めて実釣した時、鯉の引きが軽く感じられました。同じ強さで鯉が引いた時に、竿が短いほど手元に感じる力は小さくなります。また、穂先の柔軟性とバットに力が掛かってからの腰の強さは、さすがに石鯛竿です。大物と渡り合うための条件は十分満たしていますが、軽く感じるからと言って不用意にラインに大きなテンションを掛けないようなテクニックが必要です。初めは狭い所でのキャスティングが楽だからという理由で短竿に手を出したのですが、この竿を使って以来、やみくもに鯉と引きあうのではない、短竿での繊細なやりとりに魅入られてしまいました。ここから私の中での短竿ブームに火が着いたのです。
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FF振出石鯛410Mを使い、際どい空間でやり取り
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繊細なやり取りに魅入られた(FF振出石鯛410Mにて)