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Record1500のメカニズム(1)

初版 2016.9.18

Record 1500の内部機構を探る

 

Record1500の全パーツ

 
今回は、Record 1500の構造をより深く理解するため、実際にリールを分解してみました。写真には、取り外したすべてのパーツを並べてあります。
 
すでに7000シリーズについて触れた際に、60点を超える部品構成であることをご紹介しましたが、それに比べると、このRecord 1500は非常にシンプルな作りであることがわかります。これから各パーツをひとつひとつ丁寧に組み立てながら、その構造や工夫についてご説明してまいります。
 
組み立てにあたっては、各部品を洗浄したうえでグリスアップを行いましたが、製造から長い年月が経っていることもあり、汚れが完全には落ちない箇所も少なくありませんでした。そうした部分も、本機が歩んできた歴史の一部として、味わい深くご覧いただければと思います。
 

Record 1500 全パーツ一覧

 

左スプールキャップ

 
最初に取り上げるのは、左側のサイドプレートです。
スプールキャップは、メカニカルブレーキの役割を果たす重要な部品であり、その締め込み具合を微調整することによって、回転の抵抗が調整されます。このため、キャップが緩まないよう、軸受けの周囲には花びら状のスプリングが配置され、緩み止めとして機能しています。
 
また、スプールキャップ内部にはゴム状のパッキンが組み込まれていますが、経年による劣化が疑われたため、今回は無理に分解せず、現状のままとしました。この部分には潤滑オイルがたまりやすいような設計がなされており、当時の工夫がうかがえます。
 

クリック機構

 

クリック機構

 
左サイドプレートの裏面には、クリック機構が備えられています。ON・OFFの切り替え時にスライドするクリックポールは、C字状のスプリングアームで軽く挟み込まれるように設計されています。クリック音は、後述するクリックギヤにこのポールが弾かれることで発生する仕組みです。
 
動作原理については、以前取り上げたAmbassadeur 9000CLと同様ですので、ここでは詳細を省略いたします。
 
なお、スプリングアームを注意深く見ると、わずかに歪んでいるのが確認できます。これが工場出荷時からの形状なのか、あるいは以前のオーナーが手を加えたのかは定かではありません。ただ、クリックの強さを微調整するため、出荷時に意図的に曲げられている可能性も考えられます。
 
周囲には溝が設けられており、これはスプールの縁がこの溝に沿って入り込むことで、ラインの巻き込みを防止する役割を果たしているようです。なお、左サイドの軸受けはプレートにカシメられており、取り外すことはできません。
 

スプールの構造

 

穴はシャフトの固定のため

 
スプールは中央の芯と、両端のツバ(フランジ)からなる三つの部品をカシメて一体化した構造となっています。さらに、中心部にはシャフトが通されており、芯に貫通穴を開けた上で、スプリングピンを打ち込んで固定されています。
 
現代のリールでは、スプールは一体成形で製作されるのが一般的ですが、当時はまだ製造技術が今ほど成熟していなかったのかもしれません。左サイドからの写真を見ると、このスプールの構造がよくわかります。また、表面の質感から、素材はアルミダイキャストであると推察されます。
 

ダイキャスト化の背景 ― Åke Murvallの関与

初期のRecordスプールは、旋盤による削り出し加工で製作されていました。しかし、1944年にÅke Murvall(オーケ・ムルヴァル)氏が工場長に就任して以降、ダイキャスト技術が本格導入されたとされています。
Åke氏は元々、ダイキャスト専門メーカーの技術者だった人物であり、その経験がリール製造に活かされたと考えられます。
したがって、このRecord 1500は、ダイキャスト移行後の1944年から1951年の間に製造されたリールであると推定されます。
 

左サイドのクリックギヤ

 

左サイド(クリックギヤ)

 
左サイド内部には、クリックギヤが設置されています。歯の数は9枚で、スプールが一回転するたびに9回のクリック音が鳴る仕様です。
機構自体は、現在の多くのリールにも受け継がれているものですが、近年ではこの部分の素材が金属からプラスチックに置き換えられ、コストダウンが図られています。
 

右サイドのピニオンギヤ

 

右サイド(ピニオンギヤ)

 
スプールの右サイドにはピニオンギヤが取り付けられており、ここには「はす歯」と呼ばれる角度のついた歯型のギヤが使用されています。歯数は12。
シャフトの先端には若干の損傷が見られましたが、これはおそらく以前の使用者が何らかの調整を加えた結果と考えられます。ギヤとシャフトはキー溝によってしっかりと連結され、圧入によって固定されています。
 

さいごに

リールの要とも言える右サイドプレート内部には、さらなるメカニズムが集約されています。次回はその詳細について、じっくりとご紹介してまいります。どうぞお楽しみに。


 
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