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第5章 下仕事(2)素材への下糸巻き〜糸止め

②素材への下地糸巻き

 この工程の目的は、竿の強さ(ネバリ)としなやかさの追求です。石鯛竿等の大物竿には、よく「総巻き」という文字を目にすることがあると思います。それが、今から行う素材全体に糸をしっかりと巻き付けることなのです。
 
 巻き方は、口金の下巻きと同様に、糸同士が重なることなく、且つ隙間無く、ある程度のテンションを掛けながらしっかりと巻いていきます。もちろん途中にコブなど作ってはいけません。巻き始めも、巻き終わりも、結び目やコブを作らないように、糸の端を一緒に巻き込んでいきます。
 

③糸止め

  
 トップガイド部分は巻かない 糸の素材は、強ければ強いほど良いと思われがちですが、私はそうは思いません。私はナイロン等の化繊糸は使わず、絹や木綿の天然素材の糸を使用しています。なぜなら、糸巻きの後には、ウルシを何回も塗り、仕上げて行くわけであり、最初のウルシをしっかりと糸に吸わせ糸全体をしっかりと固める必要があるからです。
 

糸の巻き始め(穂先) トップガイド部分は巻かない

  
 化繊糸では、糸全体に吸収されたウルシが固まるのではなく、糸の上に塗られたウルシが固まることになるのです。上手く表現出来ませんが、巻いた糸がウルシを吸って固まることで、素材全体をウルシでしっかりとコーティングするイメージですか・・・?ちなみに、隅田川スペシャルⅠ・Ⅱでは、木綿糸を使用しました。
 

糸の巻き終わり(輪を作り端糸を引き込む)

  
 素材全体に糸を巻くと、普通は竿が硬くなるイメージを持たれることでしょう。しかし、そうではありません。ビフォー/アフターで比べて頂ければ一目瞭然なのですが、「やわらかくなる」わけではありませんが、「曲線がしなやかになる」という感じが得られるはずです。
 

巻き終わり完成

  
 また、竿に力が掛かった際に、素材の繊維がはじける(竿が折れる)現象を、この糸とウルシのコーティングで抑える効果も期待出来、結果、ネバリが増すと言えるのだと思います。
 

 

総巻き終了

 

竿全体(総巻)

 

③糸止め

 この工程の目的は、素材に巻いた糸の毛羽立ちを、ウルシを用いて抑え、また糸全体を素材に接着させることです。この時にしっかりとした仕事をしないと、この後の本塗りの際に、相当な苦労をすることになりますので、慎重な仕事が求められます。
 
 まず、透きウルシ少し薄めに用意します。溶剤との割合は、5:5~6:4くらいが良いと思います。最初は糸が思いっきりウルシを吸いますので、思ったより大量にウルシを使います。あらかじめ多めに作ることをお勧めします。
 
 ウルシが用意出来たら、筆を使って一気に塗っていきます。筆の使い方は、必ず竿に対して直角に、糸目に対して一方方向に動かします。間違っても、竿に対して縦方向に動かしたり、筆を往復させるような使い方はしてはなりません。糸がますます毛羽立ってしまい、大変なことになってしまいます。
 

「糸止め」透きウルシ塗り・筆使い

  
 この工程は、塗りむらとかは全く考えずに、筆使いのみ気を付けて、とにかく素早く一気に行って下さい。途中で乾いてしまうとこの次の工程が出来なくなってしまいます。
 
 穂先から元まで塗り終えたら、今度はウルシが乾く前に、親指と人差し指の間で竿を挟み、糸巻きと同じ方向に竿をしごき、糸の毛羽立ちを抑えていきます。必ず糸巻きと同一方向に竿を回転させることが大切で、逆回転ですと折角巻いた糸がほずれてしまいます。手がウルシでベタベタになりますが、素早く一気に、そして一発で決める事が大切です。
 
 ここまで、終了したら、ウルシをゆっくりと乾かします。ほこりの立たない場所で、少し湿気のある場所を選び、3日ほどゆっくりと待ちましょう。
 
☆注意
 
 私が使うウルシは、まず、かぶれることはありませんが、小さなお子さんが居る場所での使用は控えた方が良いかもしれません。また、匂いは強烈です(特に溶剤)ので、換気をすることを忘れてはいけません。先ずは、奥様の了解を得ることが重要かと思います。くれぐれも家庭内トラブルにならないように!
 
 また、ウルシは衣服に付くと絶対に落ちません。私はウルシを扱う時は、専用の服(ウルシだらけの服)で行っています。
 
 もう一つ重要な事があります。それは、塗りを始める前に、乾かす場所を確保する事です。竿を立てて乾かすにしろ、横にして乾かすにしろ、塗った部分が、何かに触れないような工夫が必要です。これを怠ると、塗りが終わった後、表面が乾くまでの数時間、竿を手に持ったままでいなくてはなりませんよ!しっかりとした準備が必要です。
 
次の章では、リールシートの取り付けと、握りの作製に取り掛かります。

2008/10/19
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