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Record1500の外観

初版 2016.5.1

ABU Record 1500について

ABUが初めて世に送り出したリールは、「Record」という名称で誕生しました。登場したのは第二次世界大戦の最中、1941年のことです。ラインナップは1500、1600、1700、1800の4機種。当時としては斬新な設計で、後の名機「Ambassadeur 5000」が発売される1952年まで、基本設計を大きく変えることなく販売が続けられました。
 

ABU Record 1500

 
今回ご紹介するのは、その初期モデルのひとつ「Record 1500」です。発売当時の詳しい情報は乏しいのですが、現存する実物や記録から、少なくとも以下の3タイプが存在したことが確認されています。すなわち「Record 1500」「1500 MODELL A」「1500 MODELL C」です(MODELL の綴りは、英語表記とは異なりスウェーデン語表記が用いられています)。
 

Record 1500の刻印と外観

 

右サイドプレート

 
右サイドプレートには、「RECORD No1500 A.B.URFABRIKEN 〜 SVÄNGSTA」と刻まれています。MODELL Aでも同様の位置に刻印がありますが、MODELL Cになると左サイドプレートに変更されるのが特徴です。
 
このリールは、都内の店舗で購入したものです。ショーケースにはRecordシリーズ4機種が並んでいましたが、その中でもこの1500は、もっとも初期の姿をよく残しているように見えました。ただし、箱や付属品はなく、キズも目立つため、ヴィンテージリールとしての評価は決して高くはありません。
 

リールフットと製造時期

 

フットナンバーがまだない

 
リールフットを確認すると、この時代の特徴として「フットナンバー」はまだ存在しておらず、「MADE IN SWEDEN」の刻印のみが見られます。製造年を特定する手がかりが乏しいのが少々残念なところです。
 
ABU公認ガイドブック『アンバサダーと私』(Simon Shimomura著)によれば、最初のRecordリールが登場した年には諸説あり、1939年、1941年、1942年の3説があるようです。1939年説はABUの75周年記念ポスター、1941年説はABU工場の資料、そして1942年説は工場の向かいにある資料館によるものとのこと。ここでは、ABUの三代目社長・レナート氏の回顧録に記された「1941年説」を有力としています。
 
したがって、この写真のリールは1941年から1951年の間に製造されたものと考えられます。さらにMODELL AやMODELL Cが派生型であることを踏まえれば、本機はその前段階の「素の1500」と推測されます。
 

左サイドプレートと構造の特徴

 

刻印のない左サイドプレート

 
左サイドプレートには一切の刻印がなく、シンプルな仕上がりです。ラインアラーム(いわゆるクリッカー)は装備されていますが、レベルワインダーのギヤはなく、右サイドに組み込まれています。スプールシャフトは、両側からメカニカルブレーキ(スプールキャップ)で挟み込む構造です。
 
また、リールの各所には「カシメ」が用いられており、フットや左サイドプレートなどにその痕跡が見られます。
 

ハンドルノブの印象

 

ハンドルノブ

 
最後に、意外と語られることの少ないハンドルノブについて触れておきましょう。照明の具合によって色味の印象が変わりますが、実物は写真の通りブラウン系。室内の灯りのもとでは、もう少しキャラメル色にも見えます。
 
形状は細身で、つまんだときの感触も繊細です。ダイレクトドライブ方式のため、慣性(イナーシャ)を抑える意図があったのかもしれません。また、当時のアメリカ製リールの流行に倣ったデザインとも考えられます。いずれにしても、時代の背景が感じられるディテールです。
 
このように、ABU Record 1500は決して華やかな存在ではありませんが、戦時中に生まれた記念碑的なモデルとして、今もなお多くの釣り人の心を惹きつけてやみません。傷や欠品さえも、その歴史の重みを物語っているように感じられます。


 
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