製作の工程
待ちに待った釣行会(2023年11月1日)
霞ヶ浦釣行会の初日。先に現地入りしていた並継のこぶちゃんが、笑顔で迎えてくれました。挨拶もそこそこに、車の中から立派な竿袋に入った竿を取り出します。竿袋までこぶちゃんの手作りとは――ここまでやってくれるとは思ってもみませんでした。
釣り座を整え、一息ついたところで、今回の竿づくりについて詳しく話を聞くことにしました。以下は、こぶちゃん談です。
1.竿の素材 ― 布袋竹(ほていちく)
「今回使ったのは布袋竹。節が高く、ゴツゴツとした力強い肌を持ち、和竿ではもっともよく使われる竹です。本来はテンヤ真鯛用の手バネ竿に使う予定で切り組みしてあったものですが、この糸巻き竿にぴったりだと思い使いました。」
2.下地塗り ― 山立ての技法
黒漆をベースに塗った後、「山立て」という技法で凸凹を作ります。これはヘチマを使い、点々と漆を乗せて固める工程。この凹凸が後の模様として生きてきます。
3.螺鈿(らでん)と金粉
螺鈿とは貝を使った装飾のこと。山立ての上から貝粉を散らし、さらに金粉をのせます。その上に黒漆を数回塗り重ね、深みを出します。
4.研ぎ出し
黒漆を細かいペーパーで磨きながら削ると、凸部の貝や金粉が浮かび上がり、凹部には黒漆が残ります。どんな模様が現れるかは研ぎ出してみないと分かりません。今回は一度目の研ぎ出しに納得がいかず、下地塗りからやり直したとのこと。
5.籐巻き
装飾としてワンポイントの籐巻きを施しました。落ち着いた質感が全体を引き締めます。
6.本透明漆塗り
竿全体に本透明漆を約10回重ね塗り。しっとりと落ち着いた光沢と、手に馴染む滑らかな触り心地に仕上がりました。
7.金具付け
ガイドとリールシートは糸で巻き付け、その上から黒漆を数回塗り込めて固定。丈夫さと美しさを兼ね備えています。
8.覆輪(ふくりん)入れ
覆輪は黒漆の端に入れる朱色の細い線。細糸に朱漆を含ませて竿に当て、回しながら描くため、息を止めて一気に仕上げます。もちろんエアコンも停止。昔の名人はネズミの髭を使ったそうです。
9.竿袋も手作り
「ちょうどいい生地があったので、自分で作ってみました。紐のところが一番難しかったですね。細かい部分は見ないでください(笑)」とのこと。
編集後記(miwa)
私は長年、リールにラインを巻く時はリール本体を手に持って作業していました。それでも不自由はなかったのですが、ふと「実際の竿と同じ条件で巻いた方が、より綺麗に巻けるのでは?」と思い、中古釣具店へ。
そこでジャンク竿を切って作ろうと考えたのですが、ふと「どうせなら長く愛用できる、工芸品のような竿にしたい」と思い直し、手ぶらで帰宅しました。
思いを巡らせるうち、「美しさと機能を兼ね備えた竿=和竿」に行き着き、こぶちゃんの顔が浮かびました。こうしてお願いに至ったわけです。
出来上がった竿は、見た目の美しさだけでなく、リールシートの真ん中に重心があるため、どのリールを付けてもバランスが変わらないという優れもの。巻き心地の安定感は抜群で、和竿クリエイターのこだわりが細部まで息づいていました。