魚体の名称
《要約》
- 鯉の体は、口吻・ヒゲ・鼻孔・目・エラブタなどで構成され、餌の摂取や感知に重要な役割を果たします。
- ヒレは背ビレ・尻ビレ・尾ビレなど5種類あり、泳ぎやバランスの調整に使われます。
- 側線ウロコには感知孔があり、水圧や音の変化をとらえて周囲の状況を把握します。
- 粘液膜はウロコの下にあり、体温調整や保護の働きを担っています。
あらためて説明するまでもないことかもしれませんが、今後の解説をわかりやすくするために、魚体の各部の名称を図にまとめておきました。
魚体の各部名称
水中を自在に泳ぐために備わっている5種類のヒレ、そして鯉の大きな特徴でもある2対のヒゲ、呼吸器官であるエラブタ、目・鼻孔・口吻といった器官が主な構成要素です。さらに、真鯉の特徴として全身を覆うウロコの下には、粘液を分泌する粘液膜があり、この粘液が魚体を覆うことで体温の調整に関与していると考えられています。水温が下がると粘液の分泌量が増える傾向があります。
また、ウロコの中でも側線上に並ぶウロコには、それぞれ1枚につき1つの側線孔があいており、ここが水圧や水流の変化を感知する重要な器官につながっています。以下、それぞれの部位について詳しくご紹介いたします。
口吻(こうふん)
鯉は水底の餌を泥ごと吸い込み、不要なものは口から吐き出すという食性を持っています。そのため、口は下向きに大きく開く構造になっており、普段は写真のようにしわ状に折りたたまれています。
鯉の口吻
釣りをされる方であればご存じのとおり、鯉の口は他の魚に比べて肉厚でしっかりしています。フッキングした際に針が深く刺さることが多く、なかなか外れにくいのはこのためです。
ヒゲ
前述のとおり、鯉には口吻の両脇とその少し上に2対のヒゲがあります。下側のヒゲが長く、上側のヒゲは非常に短いため、あまり目立ちません。
なお、左上の写真の鯉は特に長いヒゲを持った個体で、一般的にはこの半分程度の長さです。ヒゲの役割や特徴については、「食性と味覚」のページであらためて詳しく解説いたします。
鼻孔
鼻孔は目のすぐ前方に位置しており、当然ながら嗅覚器官として機能しています。鯉は水中のアミノ酸や脂肪酸といった化学的刺激を感じ取り、餌の存在を察知します。
また、オスはメスの排卵時に放出される卵巣液(プロゲステン系ホルモン)の匂いに反応し、精子の形成を促進することも知られています。さらに、外敵の接近を知らせる“警報物質”の受容にも鼻孔が関与しており、これについては「嗅覚」のページで取り上げる予定です。
ウロコと側線
鯉のウロコは、頭部から尾ビレにかけて互いに重なり合うように配列されています。その中でも、エラブタの上部から尾ビレにかけて一列に並ぶものを「側線ウロコ」と呼びます。
それぞれのウロコには1つの側線孔があり、この孔は内部の側線管を経由して、「クプラ」と呼ばれる寒天状の感覚器官へとつながっています。クプラは水圧の変化を感知するセンサーとして機能し、そこから側線神経へと信号を伝えています。
ウロコと側線
水圧を感じ取ることは、水中の音を波動として認識することはもちろん、大気圧や水流の変化を察知する上でも極めて重要です。
私見ですが、体の左右に側線があるということは、左右の水圧差から音や水の流れる方向を判断できる可能性を示しているように思われます。
なお、側線管はリンパ液のみを隔てて外部の水と接しているため、神経がほぼ外部に露出しているような繊細な構造となっています。このため、釣り上げた鯉を扱う際は、できるだけ柔らかく、濡れた場所に静かに置くなどの配慮が必要です。
ヒレと鰭条(きじょう)
鯉の背ビレは基底(付け根)が長く、これがチャイニーズカープとの大きな違いの一つとされています。
ヒレを構成する筋は「鰭条(きじょう)」と呼ばれ、背ビレの前端にある長い鰭条や、尻ビレの前部の鰭条には「鋸歯(きょし)」と呼ばれるギザギザ状の突起が見られます。
背ビレの前端鰭条の鋸歯
尻ビレの前端鰭条の鋸歯
鰭条の本数は、背ビレで19~21本、尻ビレでは5本が一般的です。ただし、分類学上の数え方として、一番前の短い棘状の鰭条は数に含めず、最後の2本は1本として数えるという決まりがありますので、注意が必要です。
鋸歯は大型の鯉ほど明瞭に発達している傾向があります。リリースの際に、鋸歯がタモ網に引っ掛かってしまうこともありますので、そのような場合は無理に外そうとせず、手で丁寧にほどいてから静かに水中へ戻してあげてください。
《参考文献》
1)山田 勲『図解早わかり 野ゴイづり入門』西東社
2)小西 茂木『詳しくわかる野ゴイ釣り』西東社
3)岩井 保『釣り魚博士』保育社
4)森 秀人『釣りの科学』講談社
5)上野 輝彌・坂本 一男『日本の魚』中公新書