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第7章 竿本体の塗り(研ぎ出し技法)

 ここでは、竿本体の塗りの工程を説明します。
以前にも書きましたように、竿本体の塗りは、竿の性能には殆ど関係の無い事であり、作者、使用者の「こだわり」の世界であることをご理解頂きたい。竿としての機能のみを考えるのであれば、最低限の防水が施されていればよいのですから。隅田川スペシャルでは、この塗りに最も力を入れ、竿の機能プラス仕上がりの美しさも追求していきます。したがって、「ここまでやるか」と言われるくらいの塗りを行っていきます。
 
 まずは、一般的な塗りの基本についてご説明します。
 
 使用する塗料は、「うらしま印の高級うるし」を使用します。かぶれる事無く、取扱いが極めて簡単です。チューブから漆をしぼり出したら、そのまま使わずに、専用のうすめ液にて塗りやすい濃度に薄めます。私の場合、7:3~8:2で薄めます。塗料が垂れずに限りなく薄くが理想です。慣れないうちは、若干濃い目がお勧めです。塗りの工程は、①塗り → ②乾燥 → ③研ぎ が1サイクルになります。これを、表面が均一に平らになるまで、数回~十数回行います。
 
① 塗り
漆を塗ることです。塗り方は、下仕事の章でも書きましたが、竿に垂直方に筆を使います。
 
②乾燥
十分に漆を乾燥させます。適度に湿気のある場所を選び、3日~5日はそのままにしておきましょう。ここで焦ると、次の「研ぎ」の工程で失敗してしまいます。
 
③研ぎ
細かい目のサンドペーパーを用い、塗装面を削ります。私は800番~1500番を用い、仕上げに近づくにつれ徐々に細かくして行きます。サンドペーパーは水に浸して使い、竿に対して平行方向に動かします。研ぎの目的は、塗料を均等に仕上がりを限りなく平らにする事ですので、一か所を削り過ぎないよう、竿は常に回転しながら行うようにします。焦らず慎重に行いましょう。
 
 ここからは、「隅田川スペシャル3」への実際の塗装の説明です。
 
 隅田川スペシャルでは、「研ぎ出し」という技法を用いた塗りを行います。塗りのサイクルの途中で、色を変え、研いだ時にでる不規則な模様を楽しむものです。よほど慣れないと、思うような模様を出すことは出来ませんが、研ぎ出すまでどのような模様が出るかが分からない所が、また面白いところなのかもしれません。
 

① 黒漆塗り[写真1]

最初は、「黒」を塗ります。下地の糸目が概ね消えるまで、塗り→乾燥→研ぎのサイクルを繰り返します。乾燥は十分に行って下さい。(完全に平らにする必要はありませんが3~5サイクルは必要と思います。)
 

写真1:「黒漆」塗り

  

② 赤漆塗り[写真2]

次に「赤」を塗ります。軽めの研ぎを行い、2~3サイクル行います。
 

写真2:「赤漆」塗り

 

③ 研ぎ出しと紅溜漆[写真3][写真4]

赤地に黒の研ぎ出し模様が出たら、次に「紅溜」を塗ります。
※「紅溜」とは、赤系の透き通った塗料で、私はその深みのある仕上がりが気に入って
います。
 

写真3:研ぎ出し模様

 

写真4:「紅溜漆」塗り

  
④紅溜漆のペーパー掛け[写真5]
「紅溜漆」の工程は、最低でも5回以上行うようになります。サンドペーパーは、より細かい目のもの(1000番以上)を用い、仕上げを意識して塗りを繰り返します。ペーパーを掛けた際に、竿の殆どにペーパーが当たるようになれば、その面は平らに近づいたことになります。最初の内は、ペーパーの当った所(つやがなくなっている所)と当ってない所(つやがある所)がまちまちだったのが、回数を重ねるうちに、つやが殆どなくなります。塗りの仕上げが間近です。
 

写真5:竿全体にペーパーが当たっている状態

 
⑤拭き塗り[写真6]
いよいよ塗りの仕上げです。「本透明漆」を薄く塗ります。この工程は、和竿では、「拭き塗り」と言って、手の親指と人差し指の間に漆を付け、手で拭くように塗る技法です。漆は、限りなく薄く、均等に塗り、それを数回繰り返して仕上げます。この際私は、研ぎの工程は省き、最後の仕上げに、細かいコンパウンドで軽く磨く程度にしています。
 

写真6:仕上げの「拭き塗り」

  
 過去に実際に手に漆を付けて行ったことがありますが、手が予想以上にべたべたになり始末に困った経験があります。それ以降、写真6のような「タンポ」を作り、そこに漆をしみこませて、塗っています。「タンポ」は、糸くず等が出なければどんな生地でも良いと思います。私は、日本手拭の使い古しを用いています。ポイントは、・漆は薄く ・塗りは素早く均一に ・乾燥中にほこりが付かないようにです。長く続いた「塗り」工程の仕上げです。慎重に、慎重に!
 
次回は、ガイド取り付けを行い、いよいよ「隅田川スペシャル3」の完成です。
お楽しみに!

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