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第4章 下仕事(1)継口部分の口金取付け

 下仕事とは、強さと美を追求した竿を完璧な仕上がりにする為には無くてはならない工程です。極端な話しをすれば、購入してきたグラス素材にリールシートとガイドを取り付ければ、竿になります(当然継ぎ部分の若干の補強は必要ですが)。魚を獲るだけの目的ならそれでも良いでしょう。しかし、釣りを楽しむ私達にとって、自作の竿を使うということは、「自分だけの竿」「世界にひとつの竿」ということにも、ひとつのこだわりがあるはずです。(少なくとも私にはあります!)
 
 仕上がりの良い竿を目指すのであれば、これからお話しする「下仕事」を丁寧に確実に行わなければなりません。初めて竿作りをする人にとっては、とても面倒な作業になると思いますが、全ては美しい仕上がりのためですので、あせらずに時間を掛けて、じっくりと作業を進めて下さい。
 
さて、「隅田川スペシャルⅢ」の下仕事は、
 ①継口部分の口金の取り付け
 ②素材への下地巻き
 ③下地糸の糸止め
の工程です。このあと、個々にご説明致します。
 

①継口部分の口金取り付け(口金下地巻き→取り付け)

 はじめに、継竿における継口について少しご説明致します。継口は、継竿にとって最も弱い部分になります。そのために全ての継竿には、何らかの補強がされています。竹竿の場合は、こみ削りの作業に入る前に、継口部分に糸を巻き、ウルシで固める行程を行い、その後にこみを削り込み、すり合わせと行程を進めていきます。すり合わせが終了した後、中タメという火入れを行い、竹の狂いを修正し、口巻き部分の仕上げの塗装に入っていくのです。
 
 グラスの場合もほぼ同様ですが、継口部分に糸巻きを行い補強した後、更に強度を求めるために、ステンレス製の口金を用いて、強靱な物に仕上げて行きます。本来、口金は、竿全体の塗装が終了してから取り付けるべきであると思いますが、私は、その際に発生する竿本体と口金部分の段差が、なぜか気になるので、最初に口金を取り付け、竿の塗装面と口金部分に段差がなくなるように仕上げています。強度的には、どちらも同じとは思いますが、単なる私のこだわりです。
 

竿本体と段差のない口金の仕上がり(隅田川SP-1)

  
 口金は、竿の太さに合わせてオーダーしない限り、ぴったりの物はまずないでしょう。次の作業で、竿に糸を巻き、口金との調整を行いますので、その分のスペースを考慮して、口金をえらびます。
 
それでは、口金取り付けの作業開始です。まず、竿と口金の調整です。竿と口金のすき間は、1mm前後と思われますので、それに合った太さの糸を口金の幅分竿に巻きます。(この際の糸の材質は何でも良いと思います。)糸は、ある程度のテンションを掛けながら、糸同士が重ならないように、またこぶなどが出来ないように、丁寧に、平らに巻きます。
 

竿と口金の調整の糸巻き

 
 糸が巻き終えたら、エポキシ系の接着剤を用いて、口金を接着します。その際に、継口の中に接着剤が入らないように十分な注意が必要です。竿作りには、エポキシ系接着剤をよく使います。エポキシは固まった際に、容積率が変わらないので、隙間があるときは、その部分を充填しながら接着ができます。この特性を利用し、接着面がツルツルの時は、ヤスリでわざとザラザラにし、エポキシにて両面の隙間を充填しながら接着をすることで、通常より大きな接着力を得ることが出来るのです。(喰い突きが良くなる)
 

口金の接着

  
 また、エポキシは瞬間接着剤とは異なり、凝固が開始するまで、充分な時間があるので、接着時の作業に余裕が出来、接着剤を塗ってからの微妙な位置合わせ等も確実に出来るのです。完全に凝固するまでには1日以上掛かりますが、完全に固まってしまえば、大変強力な接着力を得ることが出来ます。
 
 エポキシには、5分タイプ・10分タイプ・30分タイプ・・・と凝固開始までの時間を表示して売られています。正確か否かは分かりませんが、凝固開始時間が遅い物ほど、接着力は強力と言われています。
 
 口金の接着でも、「接着剤を塗り → 口金の位置を決め → はみ出した部分をふき取る」 ここまでの行程を、接着剤の凝固開始までに終わらせなくてはなりません。(30分タイプが使いやすいかもしれません。充分に余裕を持った作業ができます。)接着後は、そっと丸1日、動かさず、完全な接着を待ちます。下巻きの糸と口金との太さ合わせがあまいと(口金のあそびが多い場合)、接着剤が固まるまでの間に、口金がずれてしまうこともありますので、下巻き糸との合わせは慎重かつ丁寧に行う必要があります。難しいですが、下巻き糸と口金との間に接着剤が入る最低限のスペースが確保される頃合いがベストなのです。

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