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第1章 和竿との出会いと継竿へのこだわり

 私の和竿との出会いは、25年前、勤務先の近くにある「つり具の櫻井」でのことでした。店内には、高級な和竿が陳列され、竹をはじめとした竿の素材が所狭しと置かれていました。当時私はへら研に所属しており、目の保養のためしばしば通っていました。
 
 ある日、店頭で和竿作りをしている恰幅の良い人から「竹で竿を作ってみないか」と声を掛けられ、「竹は折れそうで怖いから・・・」と答えると、「竿というものは簡単に折れるものではないんだよ」と優しく微笑んで、店頭に飾ってあった「非売品」と書かれ桐箱に納められていた総布袋竹の小継のへら竿を徐に継ぎだしたかと思うと、蛇口を思いっきり引っ張れとのこと。恐る恐る引っ張ってみたら、「もっと強く!もっと!もっと!」非売品と書かれた超高級品、万が一ポキッなんて事があったら一大事と思いつつも、ついには竿先が床に着くまで引っ張ってしまいました。そうとうな力だった事を今でもはっきりと覚えています。するとどうでしょう。竿は折れるどころか実に見事な曲線を描き、細身の竹とは思えない程の反発力を感じました。
 
 この人こそが、名人と言われた二代目江戸川その人であり、口巻き部分の研ぎ出し模様や、小継の節合わせ等、美術品として見ても素晴らしい、二代目江戸川作の銘竿を手にしたその日が、私にとっての和竿との出会いであり、その魅力に取り付かれた瞬間でもありました。
 
 その日の内に、高野竹13尺のへら竿素材を切り込んでもらい、当時の給料からしたら相当高価な買い物でしたが、二代目の「私が居る限り、絶対に失敗はさせないから・・・」という自信に満ちあふれた笑顔に何の躊躇もなく、和竿作りの道へ足を踏み入れることになりました。
 
 「竿の命は調子にあり」。これは二代目より良く言われた言葉です。「バランスのとれた竿は折れない」この言葉もよく聞かされました。
 
 竹は自然の物のため、継竿を作る際は、継ぐ竹同士の相性が最も大切になります。継合わせ部分の太さを合わせただけでは竿にはなりません。堅さが違ったり、竹の肉厚が違ったりと不都合が出てきて、結果的にバランスの悪い、調子の出ない物になってしまいます。最低限、堅さ・肉厚・太さ等全てがマッチしてはじめてバランスのとれた竿になり、美しい調子が出るのです。そして仕上がり時の美を追求するならば、竹のねじれはないか、節の形は美しいか、節の数は・・・と様々な条件が出てきます。これら全てをクリアするとなると、素材選びだけでも相当な日数と手間と経験が必要になってくるわけです。
 
 私は、へら鮒釣りから海釣り(船)へ進み、東京湾の小物釣りに関しては、自作の和竿で楽しんでいました。沖釣りに関しては、コマセ釣りが多かったため、和竿というわけにはいかなかったので、カーボン素材の継竿を愛用していました。二代目の「竿の命は調子にあり」の言葉は、常に頭にあり、グラスやカーボンの竿を選ぶ際には、メーカー名やデザインは度外視し、その竿の調子を重視して買ったものです。
 
 専門的に鯉釣りを始めたのは2年前で、当時は何も解らない分野だったため、釣具屋さんのアドバイス通りに、振出竿とスピニングリールの組み合わせでスタートしました。しかし、やはり竿にはこだわりがあり、継竿の調子に引かれ、持ち運びの不自由さを度外視し、継ぎの石鯛竿に手を出し、現在に至っています。
 
「並継のこぶ」の由来も、初めてオフ会に参加させて頂いた時に、ぼらひでさんが私の竿を見て名付けてくれました。現在は、ダイコーの石鯛竿が気に入り、2本揃え、荒川で使っています。もちろん、継竿です。
 
 これから紹介する「隅田川スペシャル」は、素材は軽いカーボンではなく、粘りのある肉厚のグラスを素材とし、魚を掛けた時の調子を重視し、和竿的美観を追求してみました。はっきり言って、新品の竿を購入した方がはるかに安いと思います。「グラスの鯉竿にここまでやるか?」って思われるほど、各所にこだわってみました。素材を選び、その素材の特性を活かして調子を出していくため、同じ物は2本と無く、当然ながら、詳細な設計図は存在しません。リールシートの位置は、自分の竿掛けに合わせて決め、ガイドの位置も完成した竿の調子に合わせてですから、完成してみないと個数も位置も決まりません。塗料には全てウルシを使います。(本漆はかぶれますので、私は、「うらしま印高級うるし」を愛用しています。)
 

隅田川スペシャル1:グラス素材 2本継 8尺

 

隅田川スペシャル2:グラス素材 ワンピース 6尺

  
 ご紹介する竿作りは、あくまで私の趣味であり、経験から得た知識で作製するものであり、専門的に見て間違えや、意味のない行程も多数含まれるかもしれません。お気づきの点がありましたら、どうぞご指摘書き込み下さい。また、質問等も大歓迎です。私の答えられる範疇で、お答えさせて頂きます。みなさんの竿作りの参考になれば幸いです。
 
現在は、
・隅田川スペシャルⅠ(グラス素材2本継8尺)3本
・隅田川スペシャルⅡ(グラス素材ワンピース6尺)1本
が、完成しています。まだ実際に魚を掛けてはおりません。調子については、釣果あり次第お知らせします。

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